これが本物のレースです。チェプンゲティッチは、5キロからペースメーカーを置き去りにして独走した。なかなかできないことで驚いたが、彼女は自分のレーススタイルを確立している。離されたサルピーターも追いつくため、15キロから自分で判断してペースを上げた。同じ2時間17分台の自己記録を持つ2人が負けられないと意識しあった。30キロの並走から坂道でのスパートなど、トラックのようなペースの上げ下げ。ただ単にタイムではなく、勝負という原点を追求した高いレベルのレースだった。

安藤選手は、2時間20分を切るペースで、とにかく先頭にしがみついた。2人のような世界トップにすぐ追いつくことは難しいが、先をみていくためにはこの経験は大事だ。失敗してもいいからくらいつく。後半はほぼ1人旅になったが、落ち込みは最小限だった。

女子は以前、レース設定通り、タイム設定通りの走りが続いて、少し中だるみした時期があった。今、少しずつ進化しているが、世界も進化している。厚底シューズの一般化もあってタイムは上がっている。私の日本記録2時間19分12秒を更新する時は、一気に2時間17分台を出すような気持ちで走ってほしい。(04年アテネ五輪金メダリスト)