サニブラウンは、今大会でスタートの失敗もなく、3本ともいいレースだった。決勝の舞台に残っていることはすごい。ユース、ジュニア時代の結果を見て、いずれ決勝の舞台に立つだろうと周囲も私も思っていたが、それを現実にした。関係者は、みな泣いているのではないか。

サニブラウンのいいところは、1発目から世界水準の記録で走れること。日本選手権でもそうだったが、予選の走りがファイナルにつながった一番の要因だ。

普段から1本目でしっかり走らなければいけないレベル、考えがあるところで走っている。米国だったり練習環境がそうだろう。

過去には100メートルの大一番のところで少しスタートで出遅れる課題があった。今大会は3本ともしっかりとスタートで出ている。

準決勝も、しっかり残っている力を出して走れていた。準決勝は10秒05でタイム順の通過だった。これまで9秒台でなければ、決勝に残れない年もあったが、準決勝の組を見ても、そうそうたるメンバーが出ている。10秒05は、その時のレースコンディションの問題だけ。役者は、きっちりと1組から3組までいた。悪いところを探す方が難しいかなという走りだった。

決勝は、サニブラウンが持っている自己記録から考えると、とてもいいスタートだった。ただやはり自己ベスト9秒7、8台の選手と出ていると、これからの成長でカバーしていかないといけない部分もある。

90年ぶりとなった世界大会の決勝進出は、サニブラウンがここまでとにかく努力してきた成果だと感じる。世界のトップで走ると公言して、実現していく。私たちが想像しないようなトレーニングの質の高さがあるだろう。機会があれば、日本のスプリント界で共有できたら、あとに続く選手が出てくるかなと思う。

サニブラウンは、もともと200メートルで(17年に)決勝に出ている。100メートル、200メートルをダブルで挑戦できる状態になった時、メダルに絡んでくるのかと思う。今回はケガ明けもあって、慎重に進めていただろう。ウサイン・ボルトのように100メートル、200メートルをしっかり取り組めた時、大きなパフォーマンスを出している。もちろん9秒8台はターゲットタイムになるが、200メートルにどうアプローチしてくるかで、目指す世界のトップが見えてくる。

初出場の坂井が、1発で予選を通過したこともすごいことだ。日本にいる9秒台の選手は、坂井はやはり強いと感じただろう。スタートを生かす自分のレースを国内と同じように表現した。経験すれば、経験するほど良くなってくる。この先は、国内大会でも1本目から同じように走ってほしい。

日本はいま、皆が準決勝までは来ている。もしできるなら、日本選手権も同じ日に準決勝→決勝というパターンの大会になれば、選手のパフォーマンスも変わるのではないか。

日本は予選→準決勝を1日で走って、次の日に決勝を走る。世界選手権、五輪は予選を走って、次の日に準決勝→決勝を走っている。ただ私が現役のころは、日本選手権も、同じ日に準決勝→決勝だった。

世界大会では、準決勝から決勝まで、かなり時間が短い。国内でもその経験ができればいい。世界の決勝を目指すならば、国内でも同じ大会形式になれば、選手は力を出しやすくなっていくだろう。(男子100メートル元日本記録保持者)