日本女子初のメダル獲得が見えた。女子やり投げ予選で日本記録保持者(66メートル00)の北口榛花(24=JAL)が、全体トップで決勝に進出した。1投目で今季自己ベストとなる64メートル32をマーク。日本人では11年大邱大会の海老原有希(8位)以来の予選突破となった。

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“ウイニングラン”のごとく、感情を爆発させながらフィールドを走った。65メートルに迫ったやりの行方を見届けると、振り返って、両手を突き上げて2度跳びはねた。コーチが待つ後方スタンドに駆け寄って、満面の笑みでハイタッチ。「64メートルという数字が(今季)自分の中で出したかったけど出せなかった数字だったので良かった」。たった1投目で通過記録の62メートル50をクリアした。

19年から師事するチェコ人のコーチ、セケラック氏を信じてやりを放った。「コーチが昨日もスタジアムの風の様子を見に行ってくれて『昨日と今日は似たような天気(になる)。弱いけど向かい風』と言っていたので」。通常より低空飛行が伸びると助言をもらっており、「それがしっかりできたかな」と感謝した。

東京オリンピック(五輪)では日本勢57年ぶりの決勝進出を果たすも、左脇腹を負傷して12位に終わった。その後、やりを握らない期間が3カ月もあっただけに「この後痛いところが出ないことを祈ります」と苦笑いを浮かべた。

中1日で行われる決勝で表彰台に立てば、五輪を含めて投てき種目では日本女子初の快挙となる。前日会見では「淡々と入賞を目標にやっていきたい」と控えめだったが、期待は一気に膨らんだ。

東京五輪の金、銀、銅メダリストがそろうファイナルへ。「(予選と)がらっと変わりそうな雰囲気はある。自分のことに集中して頑張る」。6月に行われた世界最高峰ダイヤモンドリーグ・パリ大会では、全種目を通じて日本人初優勝の偉業を成し遂げた。波に乗っている24歳のヒロインが、新たな壁に挑む。【佐藤礼征】

◆北口榛花(きたぐち・はるか)1998年(平10)3月16日、北海道旭川市生まれ。3歳で水泳を始めて、小6時にはバドミントンの全国大会で団体優勝。旭川東高1年までは競泳と陸上の二刀流。19年5月に日本記録64メートル36を樹立し、同年10月に66メートル00と更新した。20年春に日大を卒業。179センチ。