陸上の走り高跳びに革命を起こした偉人が亡くなった。

1968年メキシコ五輪陸上男子走り高跳び金メダリストで背面跳びを考案したディック・フォスベリーさん(米国)が12日、悪性リンパ腫の再発を受けて死去した。76歳だった。AP通信が13日、報じた。

いまから55年前、メキシコシティーの競技場に詰め掛けた観客は驚嘆した。1人の選手があおむけに空中に飛び出し、背中を地面に向けてバーを越える「背面跳び」を始めた。それまでは顔、上半身が地面を向いて跳び越す「ベリーロール」が普通。最初は面白がって見ていたが、金メダルの記録となった2メートル24をクリアするころには、1回ごとに大歓声となった。

「フォスベリー・フロップ」と呼ばれるようになった跳び方は、すぐに世界に広まった。それまではバーの上を腹ばいになる形でクリアする「ベリーロール」が主流だったが、身長193センチの体を生かしたフォルベリ-さんのスタイルが、衝撃を持って受け止められた。

背面跳びになったのは偶然からだという。高校時代、ベリーロールを習得できず、足を振り上げてまたぐように跳ぶ「はさみ跳び」を練習しているときに、体をあおむけに倒す跳び方を思いついた。背面跳びの練習を始めた当時は笑いものになっていたが、大学で磨きをかけ、五輪前には「フォズの魔法使い」といわれるほど、記録も伸び認知されつつあった。本人は「フォスベリー・フロップ」との名称を「詩的だ」として気に入っていたという。

走り高跳びは、1896年の第1回アテネ大会から行われている由緒ある種目だ。どんなフォームでもいいが、踏み切りは必ず、片足で行わなければならない。よって、体操の床運動のようなアクロバティックな跳躍はできない。現在の世界記録は1993年にソトマヨルが記録した2メートル45となっている。