8月の世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)女子5000メートル8位入賞の田中希実(24=ニューバランス)は、世界のトップに名を連ね続けるために歩みを止めない。

女子800メートルに出場し、シーズンベストとなる2分3秒98で1着となった。前半は中位につけ、後半に入ると先頭へ。「2周目ではいつものラストスパートを意識した」と2着に2秒52差をつける快走をみせた。来夏のパリオリンピック(五輪)へは1500メートルと5000メートルの2種目での出場を見据える中「まずは800メートルで2分を切る力をつけたい」との狙いのもと出場した。

今夏は世界選手権後も欧米のレースを転戦し続けた。今月8日には世界最高峰シリーズ・ダイヤモンドリーグ(DL)ブリュッセル大会で5000メートルに参戦し、日本新記録となる14分29秒18をマーク。同17日には同シリーズの年間上位者で争うファイナルに初出場し、同じく5000メートルで14分42秒38の6位となった。

そのDLファイナルでは前日に発熱。レース当日は体温も37度だったが、一時は39度まで上昇した。米国から帰国する飛行機では「疲れていて、最後帰りのエコノミーとかもすごく長く感じた」という。帰国後に診察を受けると、インフルエンザと診断を受けた。

さすがの田中も「5000を何本も走っていて、今日はもういいんじゃないかな」と棄権が頭をよぎった。ただ、10月1日には世界ロードランニング選手権(ラトビア・リガ)を控えており「頑張りすぎて体調を崩してしまうのはデメリットなんですけど、崩してもまた戻してこられるメリットは大きい」とスタートラインに立った。

その先に見据えるのは、世界のトップの“常連”となること。言葉に力を込める。

「今年は階段を1歩1歩上るように、絶対に振り落とされないように、自分の中で戦いながら、今も踏ん張りながらできている。まだ今は振り落とされないように常に力が入っている状態ですが、そこを踏ん張り抜いたら、ハッサン選手やキピエゴン選手みたいに、堂々とその立ち位置に立っていられるような選手になれる」

田中はこれからも瞳を世界へ向け続ける。