大会前に激震が走った立教大が、2年連続29回目の箱根切符をつかんだ。

上位10人の合計タイム10時間37分6秒の6位で通過。昨年と同じ順位ながら9分以上もタイムを縮めた。18年から指揮を執ってきた上野裕一郎前監督(38)が、不適切な行動によって大会直前に解任。4年生を中心にメンバーは明るさを失わず、卒業生やファンからの応援も力に変えた。55年ぶりの出場となった1月の箱根駅伝では総合18位。悔しさも糧に、目標のシード権獲得へ突き進む。

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歓喜の輪が苦難を乗り越えた強さを表していた。箱根出場を決めると、立大メンバーは自陣のテント前に整列。見守る卒業生や保護者に一礼すると、感情を大爆発させた。「箱根優勝!」と大きな目標もさけんだ。上野前監督による不祥事が明るみになったばかり。「今日は早めに帰ろうか?」。そんな声もあったが、宮沢徹主将(4年)は「気持ちを表そう」と一蹴した。「いろんな声があると思うけど、明るい姿を見せたくて」。それが背中を押してくれた人たちへの感謝の示し方だと思った。

大会前に指揮官が去った。上野前監督の熱心な勧誘で入部した関口絢太(4年)は、眠れない夜もあった。チームも揺れた。そんな中、4年生を中心に「自分が追い求めてきたのは箱根」と視線を合わせた。「出場を批判されるかもしれない」。そんな不安を心の隅に置きながら、選手間の話し合いで当日の出走者を判断。力量に適したレースプランも練った。

迎えた大会前日。部のLINEグループに10分超の動画が届いた。20年卒の増田駿さんらが「何とかしたい」と思い立ち、OB約30人のメッセージが集められたものだった。明るく鼓舞する先輩たち。部員は「勇気づけられた」と口をそろえる。その応援の輪はレース当日も広がった。沿道の至るところから「立教頑張れ!」の声が響いた。初めは不安を抱いた関口も「応援されるとペースが上がった」と力に変え、日本勢4位の個人14位でゴール。大応援を受け、チームは前回から9分12秒もタイムを縮めた。

だからこそ、結果発表の後は支えてくれた人と歓喜を分かち合うことを選んだ。関口も「素直に喜んでいいんだ」と浸った。代理監督を務めた原田昭夫監督も「応援がこんなにうれしかったことは初めて」と号泣した。「箱根優勝!」とさけんだが、まずはシード権獲得を目標に据える。宮沢主将は自信を口にした。「1人1人が自分の意志をもって、力強くチームを引っ張っていく意識があります」。心の霧が晴れ始めた。箱根路でも、思いっきり明るい声を響かせる。【藤塚大輔】