陸上女子中長距離で、8月の世界選手権5000メートル8位入賞の田中希実(24=ニューバランス)が、陸上競技の普及への思いを口にした。

20日、東京・駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場にて、中距離種目に特化した大会「ミドル・ディスタンス・サーキット(MDC)」の開幕会見に出席。今大会は男子800メートルの元日本記録保持者の横田真人氏が陸上の普及と発展を目的として発案した大会とあり、現在の陸上界の盛り上がりを尋ねられると「選手自身のレベルを上げていかないといけない」と真剣なまなざしを向けた。

MDCは観客がグラウンドレベルで観戦できるなど、選手とファンの距離の近さが魅力。田中はその趣旨にうなずきつつ「選手自身のレベルを国内でも上げていかないとメディアの盛り上げと乖離(かいり)したことが起きてしまう。(選手のパフォーマンスとメディアの盛り上がりが)一致することで、1つのエンターテインメントとして、本物として完成するのではないか」と指摘した。

9月には世界最高峰シリーズのダイヤモンドリーグ・ファイナル(DLF)に出場するなど、海外レースの雰囲気も熟知する田中。主催者側が大会を盛り上げようと工夫することは「選手冥利(みょうり)に尽きる。幸せなこと」と歓迎したが、それ以上に「選手自身が自分が何を見せたいのか」が重要だと強調した。「選手の立場としては、より強く、より速くなることに集中するしかない」。陸上界の発展には、個々人が力を高めることが必要不可欠だと持論を述べた。

田中は20日に800メートル、21日に1000メートルに出場予定。「世界のスピードも上がっている。5000メートルで活躍する選手はラスト2周(800メートル)でも日本の800メートルのトップ選手より速い」との実感から「スピード強化」を課題に据え、シーズンベスト(2分3秒98)の更新を目標に定めた。