陸上のダイヤモンドリーグ(※)第2戦の上海ミーティングが19日、上海スタジアムで行われる。第1戦のドーハ大会では9種目で今季世界最高が生まれて盛り上がった。上海大会にも女子200メートルのヴェロニカ・キャンベル・ブラウン(30=ジャマイカ)らの昨年のテグ世界陸上優勝者、男子棒高跳びのスティーブ・フッカー(29=オーストラリア)らの北京五輪金メダリスト、そして5000メートルと1万メートル世界記録保持者のケネニーサ・ベケレ(29=エチオピア)ら豪華メンバーが出場する。

 一番の注目は地元上海出身の110メートルハードル前世界記録保持者、劉翔(28=中国)だ。アテネ五輪金メダリストで前世界記録保持者。中国の国民的なスター選手だったが、アキレス腱の故障で4年前の北京五輪は1次予選のスタート直後に途中棄権した。

 手術を経て復帰し、昨年は13秒00と以前のレベルにあと少しというところまで戻ってきた。今季は5月6日のゴールデングランプリ川崎に13秒09で圧勝。上海では自身5年ぶりの12秒台が期待できる。

 しかし、好調のアリエス・メリット(26=アメリカ)が劉翔に立ちはだかる。3月の世界室内60メートルハードルでは劉翔を抑えて優勝。5月4日にはアメリカ国内で13秒03の今季世界最高をマークした。

 劉翔は世界室内で敗れたときに「メリットにスタートでリードされて慌ててしまい、自分のテクニックをコントロールできなかった」と話した。劉はスタートから1台目の歩数を、8歩から7歩に昨年変更した。川崎のようにライバル不在なら落ち着いて入れるが、そこで競ったときにまだ問題があるようだ。

 男子110メートルハードルは大会最後に行われる。スタートから1~2台目でメリットがリードし、3~4台目から劉翔が追い上げる。2人の対決は上海大会のクライマックスとなりそうだ。

 男子100メートルでも中国人選手が注目されている。ゴールデングランプリ川崎でマイケル・ロジャース(27=アメリカ)、キム・コリンズ(36=セントクリストファーネービス)の9秒台選手を破った蘇炳添(22=中国)である。追い風2.9メートルで参考記録になったが10秒04の好タイム。アジア記録の9秒99も視野に入ってきた。

 レース2日前の会見で蘇は「9秒台は出せると思う。自分の練習を見たらそれは不可能ではない」と自信を見せた。と同時に「それはいつか出せるということ。今回9秒台になるかどうかをレース前に言うことはできない」と報道陣に釘を刺していた。

 その男子100メートルには前世界記録保持者のアサファ・パウエル(29=ジャマイカ)や前述のロジャースとコリンズなど、経験豊富な9秒台スプリンターが7人も出場する。優勝候補はパウエルだが、そのメンバーのなかで蘇が2~3位に入るようだとアジア記録が出ているかもしれない。

 男子三段跳びも注目種目。昨年のテグ世界陸上で17メートル96の世界歴代5位で優勝したクリスチャン・テイラー(21・アメリカ)が期待されている。18メートルを跳べば史上3人目、21世紀に入ってからは初の快挙。昨年のテグ世界陸上2位、33歳のフィリップ・イドゥ(イギリス)がベテランの味で対抗する。

 女子の200メートルにはテグ世界陸上優勝者のキャンベルが出場する。「テグ以来の200メートルになり、現在の自分の位置を確認するのが今回の主な目的です」と慎重に話したが、アメリカ勢の話になるとトーンが変わった。

 ドーハ大会では100メートルでアリソン・フェリックス(26=アメリカ)に敗れ、今大会では100メートルと200メートルで今季世界最高を出しているカルメリータ・ジーター(32=アメリカ)と対決する。「今シーズンは(アメリカ勢が好調で)興奮しています」。ジャマイカ、アメリカ対決の上海ラウンドが繰り広げられる。

 ※ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する最高カテゴリーの競技会シリーズ。今季はドーハ大会を皮切りに9月のブリュッセル大会まで全14戦が開催される。各大会の種目別優勝賞金は1万ドル(2位6000ドル…8位1000ドル)。各大会のポイント合計で争われる年間優勝者には4万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝。緊張感あるレースが次々に行われる。また、オリンピックや世界陸上のように1国3人という出場人数の制限がない。ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が揃う中・長距離種目などは、オリンピックや世界陸上よりも激しい戦いになる。