<ちばアクアラインマラソン>◇19日◇千葉・木更津

 傷ついた公務員ランナーの心が東京湾で洗われた。アジア大会男子マラソン銅メダルの川内優輝(27=埼玉県庁)がハーフマラソンに出場。1時間4分22秒で優勝した。

 絶景かな、絶景かな-。石川五右衛門よろしく、川内が絶叫交じりにほえた。森田健作・千葉県知事と固い抱擁をかわし取材エリアに現れた時だ。「アクアライン、最高でした。絶景でした。すがすがしい素晴らしい景色。これほど楽しいコースはない!

 ニヤニヤしながら走りました」。

 V逸で来年世界選手権への道を断念し、悔し涙にくれたアジア大会から16日。日の丸の重圧からの解放、東京湾アクアラインの涼風が「精神的に病んで死ぬんじゃないかと思った」と振り返る心を洗い流した。

 事務職員を務める高校に届いた「川内先公」の宛名で「アホ公務員、2度とマラソンに出るな」の手紙、職場にかけられた批判の電話、山間トレで道に迷い飲食も尽き果て「生きてることって幸せなんだと悟った」日々…。直近の出来事を洗いざらい吐露し、しばし一介の市民ランナーに戻る。「日本代表はいったん、終わった。もう何も言われる筋合いはない。精神的に1年ぐらい休んで…」。恐れず、ひるまず2年後のリオ五輪を目指す。【渡辺佳彦】