10日開幕のNHK杯でGPデビューを果たす白岩優奈(15=関大KFSC)はこの春、ジェットコースターを克服した。昨年4月に左脛骨(けいこつ)を骨折し、12月には腰を疲労骨折。苦しみ続けた昨季を締めくくる今年3月の世界ジュニア選手権で5位に入ると、ご褒美で大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)へと出掛けた。

 ほほ笑ましい発想が発端だった。昨季終盤、中3だった白岩は母へ「梨花ちゃんはユニバの年(間)パス(ポート)持っているから、トリプルアクセル(3回転半)跳べるんかな?」とポツリ。同門で1学年下の紀平梨花(15)が昨季、女子7人目の3回転半成功者となった。唯一、前向きで踏み切るアクセルに怖さがあった白岩は、友達とUSJで勇気を振り絞ってジェットコースターに初搭乗。苦手克服の自信を胸に、3回転半の練習に取り組む。

 そんな女子高生らしい素顔の裏には、いぶし銀の一面がある。「みんながあんまり跳んでいないから、私が跳びたい」。その大技が基礎点が1・1倍となる演技後半での導入を目指す、ルッツ-ループの連続3回転ジャンプ(基礎点12・21点)だ。多くの女子選手が用いる2つ目のトーループを、難易度が高いループにすることで基礎点は0・88点の増。この「セカンドループ」に白岩は執着を持つ。

 小学時代にセカンドループにはまった。左足のつま先を突いて右足のエッジ(刃)で踏み切るトーループに対し、ループは左足のつま先を突かない。「1つ目のジャンプが後ろに流れすぎたらできない」と立て直すことができないため、セカンドループは難しいという。「セカンドループをつけることがすごいと、ずっと思ってきました」。世の注目がトリプルアクセルでも、13歳の15年4月にはサルコー-ループの連続3回転成功を喜んだ。

 今年8月、白岩はニッコリとこう言った。「今の状態では確実に五輪に行けないけれど、努力していることが完成できたら…。12月にどうなっているか、今、楽しみです」。昨季悩まされた体の痛みはもうない。強い志を胸に、シニアの荒波へ飛び込む。【松本航】

 ◆白岩優奈(しらいわ・ゆうな)2001年(平13)11月26日、京都府生まれ。12年全日本ノービス選手権のノービスBで3位に入り、15年に日本スケート連盟の強化選手入り。初出場の同年全日本選手権でシニアに交じり5位となる。世界ジュニア選手権は16年4位、17年5位。好きな選手は荒川静香。150センチ。

白岩のデータ
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