平昌(ピョンチャン)五輪開幕が1カ月後に迫ってきた。日本勢は06年トリノ五輪金メダル荒川静香以来4大会連続のメダルに向けて出陣する。今シリーズは「他国のライバルたち」と題して、男女シングルの注目選手を紹介する。第1回は「絶対女王」エフゲニア・メドベージェワ(18=ロシア)。五輪金メダル大本命だが、右足中足骨骨折と闘っている。

 昨年11月、フィギュア界に2度、衝撃が走った。最初は同9日、男子の羽生結弦が練習中に右足首を負傷したこと。2度目は同21日にメドベージェワが右足中足骨骨折を発表したこと。男女の金メダル大本命がともにハンディを負った。

 世界選手権2連覇中のメドベージェワは「絶対女王」と呼ばれる。ショートプログラム80・85点、フリー160・46点、合計241・31点はすべて世界歴代最高。合計は、現役選手でそれに続くのは世界歴代4位ザギトワ(ロシア)で、18・01点の差をつける。美しい連続3回転ジャンプ、9点台の演技構成点、抜群の安定感。グランプリ(GP)シリーズであれば、2度転倒しても、優勝できるほどだ。

 異変が起きたのは昨年10月。右足にひびが入っていると診断された。だがGPロシア杯、同NHK杯と強行出場で優勝。右足を引きずって歩いても「どの人にも若干の問題はあるもの」と気丈に話した。だがその後にロシア連盟が骨折を発表、12月のGPファイナルを欠場。けがでの欠場は人生初。同12月のロシア選手権も欠場したが、過去の実績から代表入りは確実だ。

 同じロシアの「皇帝」プルシェンコ氏を尊敬。「皇帝」も度重なるけがを克服して、五輪4大会で金2、銀2を獲得した。一方、日本が大好きでエキシビションではアニメ「セーラームーン」に扮(ふん)して滑る。外国語の勉強が趣味で片言の日本語も口にする。

 昨年12月5日、ドーピング問題に揺れた国際オリンピック委員会理事会では痛みを押して、スイスのローザンヌに乗り込み「五輪は私の夢。演技できれば、皆さんを落胆させないように全力を尽くすと約束する」と演説した。18歳は今、17日から始まる欧州選手権(モスクワ)に向けて、練習を続けている。【益田一弘】

 ◆エフゲニア・メドベージェワ 1999年11月19日、モスクワ生まれ。15年世界ジュニア選手権で金メダルを獲得。16年から世界選手権を連覇。シニア転向1年目の15年11月にGPロシア杯で2位になったのを最後に負けていない。身長159センチ。