東北「夢」応援プログラムに参加して、4年目を迎えている。このプログラムは、公益財団法人「東日本大震災復興支援財団」が主催し、東日本大震災の被災地の子供たちに指導する活動だ。遠隔指導ツール「スマートコーチ」を通じて子供たちを遠隔指導するのだ。

私は岩手県大船渡市の子供たちを指導している。1日だけのイベントを思い出とするのではなく、1カ月1回の動画を送ってもらい、1年間を通して子供たちと繋がりを持てていける。


■当初からオンラインに期待感


このプログラムを始めたころは、このような時代が来ることが想像できなかった。ただ、当初からこの遠隔指導には将来性があると感じていて、期待をしていた。

もちろん最初は心配もあった。指導が本当に伝わるのか、理解してくれるのか。泳ぎを直接見せなくても、私がちゃんとした「コーチ」となれるのか、子供たちは心を開いてくれるのか不安だった。

実際やってみると、この指導に参加する約10名の子供たちは、一生懸命話を聞いてくれる。子供たちがそのような姿勢を見せてくれるといつも感動してしまう。そして、動画から子供たち1人1人と向き合えることも、このツールを私自身気に入っているところだ。


■久々の「再会」に笑顔


これまで年に3回、子供たちに直接指導するため大船渡市を訪問していた。最初、中間、最後の成果発表だ。しかし今回は、新型コロナウイルスの影響で最後の成果発表がここまで実施できずにいた。

子供たちにとっても、1年前の目標にどれだけ近づけたか、どれだけ頑張れたか、知りたかったはずだ。

先日、ついにオンラインイベントとして最後の成果発表が行われた。子供たちにとっても、私にとっても、それを支えるスイミングのコーチ、スタッフ、親御さんたちも同じ気持ちだったと思う。

画面越しに久々の再会。私はとても楽しみにしていたが、子供たちは少しドキドキしていたかもしれない。小学生から中学生なので、みんな本当に数カ月で成長する。

オンラインで会えた時は、みんなが笑顔になってうれしかった。1人1人の成果発表で、よくできるようになったところなどを伝えると、はにかんだ笑顔になる。「細かく指導してくれて勉強になった」など感想をもらった。

最後に1年間頑張った子供たちへメッセージを伝えた。「また会いましょう」という約束とともに、約1時間の成果発表イベントは無事終了した。


■遠隔でも違和感ない


大船渡の子供たちの目標や夢が、このプログラムが始まった当時は「安全な街にしたい」など、復興に関わることが多かった。今はさらに先を見て「大船渡を東京の街みたいにしたい」など、子供たちの夢も変化してきている。

私はこのプログラムに参加できたことを心から感謝してきた。今回、このオンラインイベントが違和感なくできたことで安心した。

これから指導することやスポーツの概念などが大きく変化していくだろうと予測している。指導をする中で必須であるコミュニケーションの方法も、多種多様になるだろう。直接会えなくても、寂しさを感じたり、足りないという気持ちにならないことが、このオンラインツールで体感できた。これからも、この遠隔指導を続けていきたい。そして、また訪問できる日を心より楽しみにしている。いつもいつも大船渡のみなさん、心からありがとうございます。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)