北京冬季五輪開幕まで2カ月となった4日、米ソルトレークシティーで行われたスピードスケートW杯男子500メートルで24歳の松井大和が初優勝。米コロラド州でのスノーボードW杯女子ビッグエアでは19歳の岩渕麗楽が今季初優勝を果たした。

男子500 メートルを34秒04で優勝した松井大和(AP)
男子500 メートルを34秒04で優勝した松井大和(AP)
岩渕麗楽(2018年2月19日撮影)
岩渕麗楽(2018年2月19日撮影)

若い選手の活躍で本番が楽しみになる一方、暗いニュースも入ってくる。新型コロナの変異ウイルス「オミクロン株」の脅威だ。先月末に確認された新たな変異株は強い感染力で短期間のうちに世界に広まった。

日本政府はこれまで後手に回りがちだった水際対策を反省してか、11月30日から外国人の入国を禁止。その影響で9日から大阪で予定されていたフィギュアスケートのグランプリファイナルが中止になった。

大会が中止になるだけでなく、海外からの帰国者に対する厳しい行動制限は選手を直撃する。海外遠征から戻った選手たちが調整面などで大きな影響を受けるからだ。

今夏の東京五輪も新型コロナ禍で開催さえ危ぶまれたが、1年の延期があったために代表選手決定済みの競技も多かった。ところが、北京五輪の代表選考はこれからがヤマ場。「オミクロン株」がそんな状況にある選手たちを襲ったのだ。

フィギュアスケートの選考会を兼ねる全日本選手権は23日から、スピードスケートの代表選考会は27日から国内で行われるが、入国時の行動制限で帰国のタイミングによっては出場できなくなるかもしれない。

北京五輪を控える選手については政府も特例処置を認める方針だというが、それでも多少の制限はあるはず。そうでなければ、また「スポーツだけ特別視するのか」という批判も起こりかねない。

夏季競技と違って、氷や雪を相手にする冬季競技は繊細だ。少しでも競技を離れて陸に上がると「感覚が狂う」という選手は少なくない。ただ、変異株の脅威がある現状では、これまで通りの調整は難しい。大事な選考会を前にして、選手は大きな負荷を背負い込むことになる。

国内の代表争いだけでなく、北京五輪の出場枠獲得のために海外を転戦している多くの選手たちも感染拡大の脅威に直面する。

ほとんどの競技はW杯の成績などで各国に出場枠を与えるが、そのW杯の開催にも影響がでてきそう。今後の大会が中止になれば、これからポイントを積み重ねて出場権を得ようとしていた選手たちのプランも崩れることになる。

「オミクロン株」は、感染力は強いものの毒性は弱く、重症化リスクも少ない可能性があるという。「風邪に近づいた」「沈静化への兆し」という見方もある。だとしたら、2年近い苦しみからようやく解放されるかもしれない。

しかし、一方には「そう楽観できない」という見方もある。いずれにしても、新型株の正体が明らかになるには、まだ「数週間かかる」という声が圧倒的だ。

ただ、北京五輪を目指す選手にとって、この数週間が重要。代表選考、出場枠獲得、最終調整…。一番大切な時期を見えない敵と戦わなければならない。

ただでさえ、中国政府の人権問題などで開催の是非まで問われる北京五輪。新型株の感染状況によっては「中止」の声が出てこないとも限らない。東京五輪のように「延期」の可能性も否定はできない。

国内外のスポーツが少しずつ日常を取り戻してきたタイミングでの新型株の感染拡大。国内観戦者を入れる予定の大会側も、3日時点でチケット販売を発表できずにいる。東京五輪に続いて北京五輪を襲う新型コロナ。その相性は最悪だ。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

北京五輪・パラリンピック日本代表選手団の公式服装(2021年10月27日撮影)
北京五輪・パラリンピック日本代表選手団の公式服装(2021年10月27日撮影)