「東京五輪でたくさんの刺激や感動をもらった。今度は私たちが伝えられるように頑張りたい」。29日に都内で行われた北京オリンピック(五輪)の日本選手団結団式、高木美帆主将は力強かった。

新型コロナ禍による東京五輪の1年延期で、半年後に開催される冬季大会。夏と冬の五輪が同じ年に行われていた92年までは冬から夏まで半年だったが、逆は初。夏季大会の「熱」が冷めないうちに、冬季大会が行われることになる。

高木美だけでなく、多くの選手が東京五輪を注視していた。スノーボードの村瀬心椛が親交の深い東京五輪スケートボード代表の西村碧莉に五輪の心構えを聞いたように「兄弟」でもあるスノボとスケボー選手の交流は盛んだ。

「二刀流」平野歩夢も、親友でもあるスケボー堀米雄斗の金メダル獲得に刺激を受けたはず。東京五輪でのスケボー勢の大活躍は、これまで金メダル0のスノボ勢にも火をつける。

スノボだけではない。他でも競技間の交流が活発になっている。かつて、競技の枠を超えた交流は限られていた。他の競技は「ライバル」。競技間での情報共有などもないし、選手同士の交流も少なかった。

しかし、今は違う。国による競技力向上事業が行われて、競技間の情報共有が進む。JOCが行う「監督会議」には、各競技の強化トップが集まる。意見交換によって「新しい発見」を喜ぶ指導者もいる。

選手レベルでの交流も盛んになった。高木美は「特に大学(日体大)に入ってから、他の競技の選手と交流するようになった」と話した。「選手のバックボーンが分かると、感じることも多い」とも。それが「刺激や感動」になる。

国立スポーツ科学センター(JISS)やナショナルトレセンの拡充で、他競技の選手と顔を合わせる機会が飛躍的に増えた。リハビリなどで一緒になり。互いの悩みや思いを伝える。違う競技で頑張っている仲間の存在は、精神的に大きな支えにもなる。

SNSの普及で、普段一緒にいなくても簡単に連絡が取り合える。同い年の選手が集まって作る「LINEグループ」も盛ん。他競技の同級生の活躍に「自分も頑張ろう」と思える。

高木美は1994年生まれ。「大谷世代」だ。野球の大谷翔平に鈴木誠也、フィギュアの羽生結弦、競泳の瀬戸大也に萩野公介、バドミントンの桃田賢斗、奥原希望らは「同級生」の活躍を刺激にしている。

松坂大輔ら野球の「松坂世代」や小野伸二らサッカーの「黄金世代」は、それぞれの競技内だけだった。ところが「大谷世代」「羽生世代」に、特定の競技はない。だからこそ「東京五輪に刺激を受けて」北京五輪に臨むことができる。

日本選手団のユニホームには、北京大会から「TEAM JAPAN」のエンブレムが入った。JOCのマーケティング戦略だが、強化の面でも「チームジャパン」の力は大きい。

新型コロナ禍で、通常とは異なる大会になる北京五輪。だからこそ、競技を超えた情報共有や助け合い、連携、団結が必要になる。「チーム」で戦う日本選手団。東京五輪で過去最高の成績を残した「チームジャパン」を引き継いで、北京でも大活躍しそうだ。

【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

2022年1月29日、日本選手団結団式で北京冬季五輪への抱負を語る日本選手団主将の高木美帆
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