「結果だけでなく、伝わるものがあるんだなと思いました」。ノルディック複合の渡部暁斗の言葉だ。金メダルを目指して5回目の五輪に臨んだが、結果は銅メダル2個。もっとも、個人ラージヒルと団体での激しい争いと金メダルを目指したここまでのドラマは、金メダルと同じ、いやそれ以上の感動を呼んだ。

大会最終日を前に金3、銀5、銅9。過去最多のメダルに大騒ぎするのは分かるが、大会を通して見ていると渡部暁の言葉が心に染みる。多くの競技で多くの選手が感動させてくれた。冬季五輪は、特に「結果にはない感動」に出会える場面が多いように思う。

もちろん、五輪だから結果は大切。誰もが金メダルをとりたい。しかし、不安定な雪と氷の上で自然を相手にする競技も多いだけに運、不運が夏以上に顕著に出る。採点競技が多いだけに、判定が問題になることも少なくない。だから、順位という結果だけではないドラマが生まれる。

今大会、6種目で4位が生まれた。リンクの穴にはまったフィギュア男子シングルの羽生結弦、高梨沙羅が失格したジャンプの複合団体、超大技に挑んで他国の選手に称賛されたスノーボード女子ビッグエアの岩渕麗楽…。メダルを逃したということ以上に忘れられない大会の1シーンだ。

競技人口が少ないこともあってか、長く出続ける選手も多い。今大会で完結するドラマも、次に続くドラマもある。スノーボードの平野歩夢は平昌で敗れたホワイトから王座を受け継いだ。モーグル男子の堀島行真は前回の悔しさをメダルに変えた。98年長野五輪ジャンプ団体の金メダルも、94年大会の悔しい銀があったから一層輝いた。

33競技もある夏季五輪では、次から次へと試合が行われる。メダルを追うのに精いっぱいで、まったく見ない競技も多い。種目数が4分の1の冬季は、ゆっくり見られる。メダル以外のドラマも堪能できる。このくらいが、ちょうどいい。

最終日の20日、カーリングも「ドラマ」が待っている。石の軌道が少しの氷温変化で変わり、髪の毛1本で止まる繊細な競技。運、不運が勝敗を分ける可能性もある。4年前はメダルをかけて争った英国と「お互いにメダリストとして戦える。4年間頑張り続けたご褒美なのかと思います」と吉田知那美。開会式前から楽しんできた18日間の「ドラマ」は、いよいよ最終話を迎える。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム 「OGGIのOh! Olympic」)

スイス戦で笑顔をみせる吉田知那美(ロイター)
スイス戦で笑顔をみせる吉田知那美(ロイター)