「ハポン、ハポン!」。スタンドにスペイン語の日本コールが響いた。女子サッカーUー20W杯決勝。連覇を狙った日本はスペインに1-3で敗れたが、最後までフェアで美しく戦う姿勢が中米コスタリカのファンを夢中にさせた。

まるで、ホームだった。もともと親日と言われる国とはいえ、応援は大会を通して増えていった。試合内容が評価されたからだ。決勝は前半の3失点で後半は一方的に攻めた。ただ、決して力任せではない。豊富な運動量で連動して繊細なパスを通して崩した。

諦めないのも、日本の武器。準々決勝フランス戦は延長後半アディショナルタイムで追いついてPK戦勝ち、準決勝ブラジル戦も終了間際の得点で勝った。何度倒されても立ち上がり、ゴールを目指す。そのひたむきな姿勢が胸を打つ。

もっとも、現地ファンの日本コールは珍しくない。最後まで全力を尽くすパスサッカーはなでしこのDNA。FIFA公式サイトは決勝を「ファイティングスピリットは日本の伝説的なもの」と解説し「タオルを投げなかった」と報じた。

試合後の態度も素晴らしかった。ピッチに倒れて涙したが、インタビューでは相手をたたえ「楽しかった」とさわやかに言った。フェアプレー賞に輝き、MVPは浜野まいか(18)が獲得。ブラジル選手に抱きかかえられて祝福された感動シーンには、日本への高い評価も詰まっていた。

日本の11年W杯優勝をきっかけに、世界の女子サッカーは変わった。個からチームへ、フィジカルから戦術へ、ロングボールからショートパスへ…。米国、中国の2強から、ブラジルやフランス、スペインの時代へ。世界のレベルが向上する中「なでしこ」は伝統を変えずに進化を続ける。

勝つことは大切だし、準優勝は悔しい。それでも、フェアで美しいプレー、ひた向きさ、さわやかさはファンの心に届く。その姿勢は、コスタリカだけでなく世界中のファンに優勝にも劣らない印象を残した。

女子サッカー初の全国組織、日本女子連盟設立は1979年。日本協会も認めない組織を初代理事長として支えた森健児さんが24日に亡くなった。不遇の時代に環境整備に奔走した「女子サッカーの父」も、天国からヤングなでしこを見守り、一緒に「ハポン」コールをしたはずだ。(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

森健児さん(共同)
森健児さん(共同)