毎週日曜日掲載の「スポーツ×プログラミング教育」。今回は、静岡・袋井市立浅羽北小学校での授業「タグラグビー×算数・プログラミング」の最終回。前回のプログラミング授業でAIソフトを使って作戦を立てました。最後は、戦略を実技に取り入れ、総当たり戦で優勝を争いました。

タブレットで録画

授業の集大成となる「Asakita Cup」が開幕した。昨年11月11日、13日の6・7時間目に、6年生計8チームによる予選リーグが行われた。6年生の1、2組がそれぞれの組で総当たりした。児童たちはチームでプレーし、見違るような戦いぶり。審判を務める学年主任の佐藤規之教諭らも様になっている。

前回の5時間目では、動きをシミュレーションできるタグラグビーAIソフト「プログラグビー」を使い、5対5のゲームで勝てる作戦を考えた。チームごとにシミュレーションを行い、プログラミング的思考で戦略を立てて臨んだ。

作戦がすべてうまくいくとは限らない。手が空いた生徒は試合をタブレットで録画。ゲームを終えると動画を見ながら反省点を挙げて、作戦を立て直して次の試合に入った。

児童は試合の合間に戦略会議を行ったり、タブレットでプレー録画していた
児童は試合の合間に戦略会議を行ったり、タブレットでプレー録画していた

<予選リーグ結果>

1組 (1)赤(2)青(3)緑(4)黄

2組 (1)赤(2)緑(3)黄(4)青


11月18日の8・9時間目に、NO・1を決める決勝リーグが開催された。1、2組の上位2チームと下位2チームが総当たり。対戦表は教諭らの手作りだ。

試合を見ていた7人制ラグビー元日本代表選手の石川安彦氏が、4試合終了後に集合をかけた。ホワイトボードに赤ペンを走らせながらアドバイスを送った。

「トライも大事だけど、守備の意識もしっかり持とう。組織的な攻めを防ぐには、守り手もチーム全員で協力して組織的に守ることが必要です。横一列に並んで前に出ながら守るワン(水平)ラインを試してみましょう」

タグラグビーの総当たり戦で戦略を説明する7人制ラグビー元日本代表の石川安彦氏
タグラグビーの総当たり戦で戦略を説明する7人制ラグビー元日本代表の石川安彦氏

新たな作戦を戦略に取り入れ、児童たちはさらにレベルアップした。タブレットで録画した試合を分析するのは予選リーグと同じ。的確にプレーに反映させたチームが僅差のゲームを制した。


<決勝リーグ結果>

(1)1組赤(2)2組赤(3)1組青(4)2組緑(5)2組黄(6)1組緑(7)1組黄・2組青


試合結果が発表されると、チーム1組赤から歓喜の声があがった。今回のために作られた優勝カップがキャプテンの井田翔太君に手渡される。笑顔で頭上に掲げると、仲間たちから拍手で迎えられた。井田君は「キャプテンになったときは心配だったけど、とてもうれしいです。教室で話し合ったことを試合でメンバーみんなが声に出して言ってくれた」と喜んだ。

みんなで考える

石川氏は「全国400校ぐらいの小学校でタグラグビーを教えてきましたが、ここまで伸びた学校はありませんでした。戦略は難しいけど、聞く姿勢、理解、実行がすごい。みんなでどうしたら強くなれるか、協力して考えることが大事。これからも考えて実行してほしい」とエールを送った。

佐藤教諭は「プログラミングで見通しをもってやる体験ができました。頭で分かっていてもできないことが声をかけ合って試す経験ができた。これからのみんなの力になればと思っています」と手応えをつかんだ様子。株式会社STEAM Sports Laboratory監修の授業「タグラグビー×算数・プログラミング」は、生徒たちの思考に確かな変化を与えた。

◆小学校でのプログラミング教育必修化 英語のように教科として増えるのではなく、既存科目に「導入」される。目的は3つで、<1>プログラミング的思考(目的やゴールから逆算し物事を順序立てて考え、結論を導き出し、実行すること)を育む<2>プログラミングの動きやよさに気づき、活用したり、その態度を育む<3>各教科等での学びを確実にする。2020年には約37万人のIT人材が不足すると言われ、幼少時からの育成が急務。21年からは中学校でも実施される。

◆タグラグビー ラグビーからコンタクトやキックプレーを除き、(ボール保持者の)腰につけた2本のタグを取り合いながら、トライを狙う。ボール保持者はタグを取られた時点でパスを行い、タグを返却されるまでプレーに参加できない。取った選手も手渡しで相手に返却するまでプレーに戻れない。

◆株式会社STEAM Sports Laboratory 2018年11月設立。山羽教文代表取締役。本社は東京都港区南青山。子どもたちの「主体的・対話的かつ深い学び」を引き出すために、スポーツシーンにおける問題・課題を教材にした「新たな学びの場」の創出を目指している。