今回は私が経験したコーチング第2弾!

水泳人生の最後の数カ月を平井(伯昌)先生に指導をしていただいた。

平井先生はオリンピックの金メダリストを多数輩出した名コーチである。


平井伯昌コーチ、仲間たちと写真に収まる清水咲子氏(後列中央)
平井伯昌コーチ、仲間たちと写真に収まる清水咲子氏(後列中央)

私自身、平井先生のその実績に、ほれたわけではない。

2017年の世界選手権、担当コーチが平井先生になった。

初めて平井先生の指導を受けたのはその時だ。

「水泳を水泳の中だけで解決しないこと」

これが平井先生からもらった言葉で大切にしている言葉だ。

意外にもこの言葉通りに、水中現場の悩みは水中以外の場面が原因だったりする。

当時、泳ぎに迷いがあった私は、自身の水泳に自信がなかった。練習のタイムは速いのに結果が出ない。

どんどん自分がしている事が、間違えているのではないかと疑い始めた。

そんな時平井先生から「ゆっくり行動して」というアドバイスをもらった。

私の余裕のなさから、あれも、これもやろうとしていて、全てが雑になっていたことを見抜いていた。

私は水中の動作での注意があると思っていたが、その前の行動から水泳の動作につながっていることを教えてくれた。

ゆっくり食べること、ゆっくり歩くこと、練習前のドライランドも丁寧にゆっくり行うこと。

私にとっては新鮮なアドバイスだった。

そのアドバイスは、私の状況をすぐに良くしてくれた。順調に泳ぎもタイムも良くなっていったのだ。


■言葉に安定感がある

平井先生はその人間をよく観察し、1人1人に必要な言葉を選んでいる。

レースに行く時に「自信持って」「頑張れ」という言葉は言われたことがない。

「呼吸のリズムだけ気をつけてね」といった具体的なアドバイスが必ずある。

招集場にいくあの孤独で不安なゾーンではそんな具体的な言葉が何よりも安心する。

日頃、あれこれ考えてしまう私を見抜いてのアドバイスだ。

こうした一歩前に必ずいてくれるようなコーチングが選手には非常に大切だと感じる。


平井伯昌コーチと清水咲子氏(本人提供)
平井伯昌コーチと清水咲子氏(本人提供)

現在、指導者として活動している場面でも、平井先生がかけてくれた言葉を思い出して、まねている。

まだまだ始まったばかりの指導者生活でたくさんの失敗もあると思うが、先生の言葉を信じてやっていた水泳は、どんな結果でも受け入れられた私のように、今見ている選手にもそう思ってもらえるよう取り組んでいきたい。

◆清水咲子(しみず・さきこ)1992年(平4)4月20日、栃木県生まれ。作新学院高-日体大-ミキハウス。本職は400メートル個人メドレー。14年日本選手権初優勝。16年リオデジャネイロ五輪は準決勝で日本新の4分34秒66をマーク。決勝に進出して8位入賞。17年世界選手権は5位に入った。21年4月の日本選手権をもって現役引退した。今後はトップ選手を育てる指導者を目指し、4月からは日体大大学院に進学。同時に水泳部競泳ブロック監督も務める。