年始恒例の箱根駅伝(来年1月2、3日)が迫ってきた。昨年3連覇&大学駅伝3冠を達成した青学大の原晋監督(50)は4連覇へ、ワクワク、ハッピー、サンキューに続く「ハーモニー大作戦」を掲げている。

 今季は大エースがおらず、10月出雲、11月全日本と優勝を逃した。ハーモニーのカギを握るのは主将の吉永竜聖(4年)。箱根経験ゼロの雑草主将だ。

青学大の吉永竜聖主将
青学大の吉永竜聖主将

 ケガに泣いた1、2年は箱根メンバーに遠く及ばない。3年時の全日本で大学駅伝デビュー。昨年箱根は16人のエントリー選手には入ったが、本番は走れず、8区で下田裕太をサポート。7区で脱水症状を起こした田村和希を救護し、一緒に救急車に乗って病院にも付き添った。今年も出雲、全日本ともにメンバーから漏れ、給水など選手のサポートに励んだ。

 「過去にも同じような立場の主将はいたと思う。世間は興味ないですよ」

 そう軽く受け流したが、新チームが始動したばかりの春先は苦しんだ。同じ4年で主力の田村、下田の状態が良くなかった。背中でチームを引っ張るとの気負いも加わり、練習では常につぶれる覚悟を持って、自らを追い込んだ。

 玉砕覚悟の主将の姿勢。原監督からは「できないことをやろうとしても、自分が損する。できることをやればいいんだ」と激怒された。

 一時は監督と考えの相違が浮き彫りになったが、今は肩肘を張りすぎていたたことを理解。「主将だからと強引にまとめようとは思わない。良い意味で、自分のことを主将だと思わなくなった」と、肩の力を抜くと、自然とチームもまとまり出した。

 青学大の3連覇中は山の神、神野大地ら、主力が主将を務めてきた。

 「下の選手の考え方が分かることは、神野さんたちにはなかったところだと思う」

 1年時はチームの底辺で、2年時はケガに苦しんだ。3年時はギリギリで箱根メンバーから漏れた。さまざまな立場が分かるからこそ、ケガ人、メンバー外の人間などにも親身に声を掛ける。人の痛みをだれよりも知る主将になっている。

 卒業後は陸上を辞め、日本生命に就職する。陸上人生最後の駅伝になる箱根の区間メンバー発表は29日。残り10日余り、最初で最後の箱根出場へ、吉永主将のギリギリの戦いは続く。

 「主将だからといって選ぶわけにはいかない。勝ち取ってほしい」と原監督。吉永主将も「復路の8~10区を走りたい。仮に走れなくても自分のできることを悔いなくやりたい」と覚悟を口にした。

 雑草主将が本番へラストスパートに入った。【田口潤】

青学大の原監督(前列左から2人目)の隣でガッツポーズを見せる吉永竜聖(2017年12月12日)
青学大の原監督(前列左から2人目)の隣でガッツポーズを見せる吉永竜聖(2017年12月12日)

 ◆田口潤 東京都出身。94年に入社して取材記者一筋。五輪、相撲、サッカー、ボクシング、プロレス、ゴルフ担当を経て現在は五輪担当。