毎日のように会社が倒産している。

ついには創業119年というアパレルメーカーのレナウンが経営破綻した。上場企業では初。90年代から経営不振が続いていたが、ウイルスが最後の引き金になったと報じられていた。

CMソングのワンサカ娘や、アーノルド・パーマーの製品がはやったのを思い出す。同社にはアメリカンフットボールのチームがあった。71年に同好会で発足し、03年には会社の業績不振から解散した。30年余りで歴史を閉じたが、アメリカンフットボール史に名を残すチームとなった。

84年に東西大学選抜対抗戦から日本選手権となったライスボウルで、最初の社会人代表として出場した。1点差で学生代表の京大に負けたが、86年に関学大を下して社会人初の日本一という栄光を手にした。この10年間でV4のオービックと富士通も4年連続まで。レナウンの第1回から6年連続出場は、現在も学生を含めた最多記録となっている。

高校、大学時代に練習試合をしたが、負けたことはない。その後は日大を中心に早大、慶大などのOBが続々加わり、層を厚くしてチーム力が上がった。86年は前年に負けた日大勢が入社して強化。QB松岡は唯一の大学と社会人で2年連続日本一とMVPで、今年のライスボウルでは殿堂入り表彰を受けた。

当時は練習量の違いから、学生が優位だった。90年代に入ると、サイズやパワーで社会人が徐々に優位になった。現在は社会人が11連勝中で、通算も25勝12敗と大差がついた。ここ数年は点差も開き、安全面などから異議を問う声が強くなっている。

社会人は米国人選手の加入で年々レベルアップした。最近は日本人初のNFLを目指して専念する選手が何人もいる。今も大半は仕事優先だが、レナウンは企業チームとはいえ、まさに好き者が集まったアマチュアだった。週2回の練習は神宮球場の室内で、始業前の朝7時から1時間だけで、仕事場へ向かっていった。

ライスボウルは91年までは東京ドームではなく、国立競技場開催だった。レナウンには先輩、同期、後輩が多くいた。新春の青空の下で日本一となった後輩が「これから仕事です」と、夕暮れには防具を担いで初売りのデパートに向かった。

ライスボウルが日本選手権となって、来年は38回目となる。その前に大学も社会人もリーグ戦の開催すらまだ見通せない。密集、密接の上に大人数と、他競技以上にハードルは高そうだ。ライスボウルは今年1月が最後だった、となってしまうかもとも思う。

レナウンの愛称はローバーズだった。さすらい人、戦いと栄光を求めて長旅をするという意味もある。松岡は解散後に転職したが、今も40歳以上で構成するアンダー59ERSの現役選手。57歳で風貌は変わったが、自粛前の3月までは練習し、年相応の快足と強肩を見せていた!? 歴史的ヒーローの長旅はまだ続いているようだ。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)