岸田内閣発足に伴い、数々の発言が注目された丸川珠代前五輪相(50)も退任した。東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの中止や再延期を望む人々の反感を買い、発言がツイッターで、トレンド入りすることもあった。

新型コロナ対策分科会の尾身茂会長の東京五輪開催を疑問視する発言に「別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらいというのが私の実感です」と話し、五輪を特別視する姿勢に批判が相次いだ。

国際オリンピック委員会(IOC)トーマス・バッハ会長が緊急事態宣言発令中の東京・銀座を散策する“銀ブラ”については「不要不急であるかは、しっかりとご本人が判断すべきもの」との見解を示し、バッハ氏は特別扱いかと批判が集中。参院内閣委員会の閉会中審査で、東京五輪が感染拡大の原因ではないと断言する根拠を問われ「オリンピックの開会式は56・4%、閉会式が46・7%」とテレビ視聴率を読み上げるなど、かなり薄い根拠を示しただけだった。

一方、五輪相として、あえて矢面に立つこともあった。東京五輪・パラリンピックの医療提供体制をめぐり、「東京都の考えがまったく聞こえてこない。非常に懸念している」と東京都の対応の遅さを痛烈に批判した。実務者レベルでは話し合いを続けていたが、都の対応の遅さに業を煮やした結果、あえて公開質問に踏み切った形だった。

批判が相次ぐと、閣議後の会見で“安全・安心”な発言が増えた。2回目の五輪相就任直後は官僚が用意した紙をほぼ見なかったが、少しずつ紙に目を落とすことが増えた。一方、「予定が迫っているので」と会見を打ち切ろうとする官僚を「まだ時間はあるはず」と制し、質問を受け続けたことがあった。仕事への真面目さも垣間見た。

丸川氏の発言の数々に政府関係者の間では賛否両論があった。ある関係者は「頭が良いばかりにアドリブでの発言がよくあったが、それが失言につながっていた。また何か言い過ぎないか、いつも冷や冷やしていた」と明かした。一方で「どんな質問が飛んできても、太刀打ちできる安定感があった。言い過ぎてしまい、炎上するパターンはある程度はしょうがない」との見方をする関係者もいた。

丸川氏は元アナウンサー。知名度抜群で弁が立ち、自民党広報本部長を務めた経験も持つ。菅義偉前首相は発信力のなさを指摘されたが、丸川氏は菅前内閣の中で、良くも悪くも発信力を発揮したとみている。【近藤由美子】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)