関西大学ラグビーの同志社大が、復活に向け改革を進めている。

元サントリーCTBで、OBの宮本啓希氏(35)が今季から新監督に就任。キヤノンで主将を務め、7人制日本代表としても活躍した橋野皓介氏(34)がバックスコーチとして加わった。

一昨年度は関西リーグ2位。全国大学選手権は部員に新型コロナウイルスの陽性者が出たため、大会直前に辞退する不運を味わった。

昨年度は春季トーナメントで京産大、天理大を破って優勝しながら、秋は関西4位に低迷。大学選手権は準々決勝で帝京大に24-76で大敗した。

名門の再建を託されたのが、35歳の若き宮本監督だった。

昨季まで2季率いた伊藤紀晶ヘッドコーチは、神戸製鋼に勤務しながら週末を中心に指導にあたってきた。宮本体制ではフルタイムで指導する環境が整い、学生と向き合う時間が増えた。

練習は毎朝6時45分から始まる。軽い朝練ではなく、本気で体をぶつけ合う。これには、弱点を補おうとする宮本監督の考えがある。

「これまでは(授業後)夕方から夜遅くまで練習をしていたので、ウエート(筋肉トレーニング)の時間が取れていなかったんですね。それでは体が大きくならない。朝にしっかり練習をすることで、夕方は個人練習とウエートに時間を使うことができるので、2部練習にしました」

京都ラグビー祭(5月29日)で対戦した京産大のFW平均体重(先発8人)が102・5キロに対し、同大は94・8キロ。ラインアウトでも京産大の両ロックが身長190センチと186センチに対し、同大は180センチと179センチ。

伝統的に「バックスの同大、FWの京産大」という構図がある。とはいえ課題を少しでも改善し、FW戦でも耐えることができなければ、2015年以来の関西制覇、その先の大学選手権で勝ち進むのは難しい。

一方で、バックスの走力には光るものがある。

京産大戦は開始1分でWTB芦塚仁(3年=大阪桐蔭)が先制トライを挙げ、同18分にもハーフエライン付近からバックスがつないで加点した。前半に挙げた3本はいずれもバックスのスピードを生かしたもの。京産大を47年率いた大西健元監督も視察し「同志社にあれをやられると、うちは対応できないねえ」と漏らしたほど。19-52の完敗だったが、相手バックスラインのギャップを突く一瞬の判断は大きな魅力だった。

その“武器”を生かし切れず、後半はノートライに抑えられたこともあったのだろう。宮本監督は不満そうな表情でこう語った。

「できる、やる。その覚悟が必要。(体が)小さいのだから、相手を動かして勝つ。その覚悟がない。自ら相手の強いところ(FW戦)に行って、相手のペースにはまっている」

今季の関西リーグは一昨年度の大学王者・天理大に、昨年度の大学選手権4強の京産大、それを同大が追う展開か。

かつて岡仁詩という名将が率いた同大は、型にはまらない自由さが象徴だった。ただ自由には責任が伴う。

ある意味で紳士的なスマートな印象の同大に、宮本監督は熱さを植え付けようとしている。それは京産大に敗れた試合後、すぐに選手を集めて訴えかけたことからも、うかがい知ることができる。

「自分たちがやれることをやれば、勝てるんやぞ」

選手にはじょじょに浸透している。ロック梁本旺義主将(4年=常翔学園)は、こう話した。

「悪い意味でいい子ちゃんが多いので、監督は言い続けてくれます。目標は関西1位をとって、日本一につなげる。まだまだ同志社は甘い。やらなきゃいけないことが、たくさんあります」

1980年代に大学選手権を制すること4度。関西の大学ラグビーは、同志社が強くなければ盛り上がらない。名門復活へ。若き新監督の手腕に期待したい。【益子浩一】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

京産大に敗戦もバックスは3トライを奪った同大(右)
京産大に敗戦もバックスは3トライを奪った同大(右)