サッカー元日本代表で、ヴィッセル神戸監督も務めた三浦淳寛氏(47)の長女由楽(ゆら)さん(11)がプロゴルファーを目指すことになった。母親もサッカーU-21日本代表の夕魅(ゆみ)さん(旧姓大竹)で、小さい頃から“ミウラ流”のアスリート教育を施してきた。

由楽さんは4日夜、ハワイで開催されるキッズ・ゴルフ・トーナメント大会(パール・カントリークラブ)に参加するため、飛び立った。今回が国内外を通じて初の大会出場になる。

「初めてグリップを握ったのは4歳です。ゴルフのオモチャを買ってもらって、あっちゃん(父親)がやっていたので楽しそうだなと始めました。本格的には9歳、10歳ぐらいで、去年の東京五輪をみて集中してやろうと思いました」

両親はサッカー界を支えたトップアスリートで、子供にサッカーを押しつけてもおかしくない環境に育った。

だが、あくまでも2人は愛娘の成長過程を見守りながら、本人の意思を尊重し、自分で決断する瞬間を待ち続けた。

淳寛氏は「サッカーは格闘技だから、遊びでやるのはいいけど、プロはやめなさいと言ったんです」と苦笑。そして「基本的には好きなことをやらせて、自分で将来を決めたら、そこに向けて頑張らせたいというスタンスです」という。

夕魅さんも「無理矢理に頑張らせて将来を決めるつもりはありませんでした。でも努力しないと何もかなわないよ、とは言い続けた。スケールが小さくなると困るので、自由にのびのびやらせながら、本人が決めるまで我慢して待つスタンスでした」と振り返った。

両親がハッとしたのは昨年の七夕の日に由楽さんが短冊に書いた「プロゴルファーになれますように」と書いた願いごと。それが今年は「世界一のプロゴルファーになれますように」と“世界一の”が付け足されてあったのだ。

夕魅さんは「自分で世界一のプロゴルファーになりたいと意識が変わったんだと思いました」と、初めて自我が芽生えた娘の変化に気づかされた。また東京五輪を通して、本人は「みんな真剣にやってて楽しそうだと思いました」とゴルフの道に進むことを決意し、方向性は固まった。

今年3月にヴィッセル神戸の監督を退任してから、連日ゴルフ練習に付き合う淳寛さんも「この前ぼくが負けそうになった」と急成長に目を細める。

ただ三浦家は、礼節を含めて、人間教育には厳しい。

淳寛氏の母校、長崎・国見高で名監督だった故・小嶺忠敏氏から授けられた「自信と過信は紙一重」という座右の銘を、愛娘にも徹底的に教え込んできた。

サッカー選手だった夕魅さんも中学時代から双子の姉・七未(なみ)さん(元日本代表)と美人双子姉妹として話題だった経験を踏まえて「わたしたちも両親からテングになるなと教えられました。由楽にも人として感謝と謙虚な気持ちは忘れないように、しつけてきたつもりです」という。

今回の渡米を前に、スポーツイベント企画、健康食品事業を展開するサンライト社(本社東京=高津博康社長)とスポンサー契約を締結。同社長が「これから夢と希望を持った若いアスリートを支援したい」と語ったようにバックアップ体制も整った。

神戸のインターナショナルスクールでは、神戸MFイニエスタ主将の長女と同級生で、英語も堪能。ベストスコアは81。憧れは渋野日向子。将来像を問われて「イニエスタ選手みたいになりたいです」とスーパースターを夢見ている。

淳寛氏は「家族が1つになって戦っていきます」と決めている。由楽さんも「集中? あっちゃんのおかげ。いいショットを打ったり、いいスコアで回って楽しんできます」とまぶしい笑顔で南国に旅立った。

【寺尾博和編集委員】 

プロゴルファーを目指すことになった三浦由楽さん(撮影・寺尾博和)
プロゴルファーを目指すことになった三浦由楽さん(撮影・寺尾博和)