アスリートの生い立ちや人生のターニングポイントを聞く「わたしのツクリカタ」。ジャパンサイクルリーグ（JCL）は3月25日カンセキ真岡芳賀ロードレース、26日カンセキ宇都宮清原クリテリウムで開幕します。開幕に合わせ、宇都宮ブリッツェンに新加入し、いきなり主将に任命された谷順成（28）に話を聞きました。全3回の最終回です。（取材・構成＝沢田啓太郎）

－プロになる決断を伝えた時のご家族の反応はどうでしたか

谷　もちろん、心配はしましたよ。大丈夫なの？的な。うちは母子家庭で、母がです。でも、就職してもプロになっても、自分の選択には自分が責任を取らなくちゃいけないじゃないですか。どっちの道を行っても自分で責任を取って生きようと思っていたから。今では母も普通に（プロに）行って良かったねえと応援してくれています。

－普段の生活でも決断は早い方ですか

谷　早いですね。

－お母さん譲りですか

谷　うちの母親もさっぱりしているので、似てるかなって思いますね。母譲りと言ってもいいと思います。

－順成という名前も

谷　ああ、京都の湯豆腐屋（※1）ですね。結構、有名で、食通の人だったら知っているお店です。那須の人も行ったことあるって言っていました。

－お母さんがその店の湯豆腐が大好きだったからという名前の由来は本当ですか

谷　本当です。本当です。これは間違いありません。おもしろい母で良かったですよ。

－小さいころお母さんに怒られたり、記憶に残っていることはありますか

谷　いろいろ怒られましたけどね。人は大切にしないといけないとはよく言われました。あと食事。ちゃんとしたものを食べないといけないし、人は大切にしないといけない、この2つですね、よく言われたのは。別に僕が誰かをいじめていたとかいうことではありません。普通に、人は大切にしないといけないよって。

－いまのチーム内の役割はルーラー（※2）ですか

谷　う～ん、別に僕がルーラーですって言っているわけじゃないので。脚質からそう思われているのかなと思う。どちらかというと、これまでのチームすべてでエースだったので。ブラーゼンもそうだし、ヴィクトワールも自分が勝ちにいかないといけない立場でした。みんな支えられていたタイプですね。まあでも、今のチームは、もちろん小野寺玲選手もそうですし、誰でも勝てる脚が、力がありますから。時にはもちろん、自分も勝ちたいと思っています。勝ちにいきたいと思うんですけど、展開とかレースの流れ、仲間の誰かが調子がいいということだったら、自分がその人の勝ちに貢献したいなと思いますし、自分が勝ちにいった時に自分を利用して勝ちにいってもらうとか、そういうこともできるので。そういうことを今のチームでやっていきたいなと思っています。決して自分の勝利は忘れずに、常に狙っていきます。

－那須からブリッツェンに移籍した決め手は

谷　昨年の3月に那須の若杉代表から、いろいろと体制が変わるという話を受けていて。国際レースとかに行くチームではなかったので、自分の今後のキャリアを考えて、移籍していいよと言ってもらっていたんです。自分の中で、動くタイミングなのかなって思って。コンタクトを取ったわけじゃないですが、ほかのチームをいろいろ見ていました。そんな時に（宇都宮ブリッツェンの）西村監督から連絡が来て、来年一緒に走らないかって。5月、6月の末ですね。それが決め手でした。

－プロとしての最終的な目標は

谷　日本一になるというのがちっちゃい時からの目標なので、日本選手権（※3）というは1個あって。日本一をできれば今年取りたいなと思っています。ただスポーツが強いというだけじゃなくて、そのスポーツが持っている力を生かして社会に貢献できる選手になりたいと思います。日本一をとった先に、世界の選手と戦える、例えばジャパンカップで勝てる組織になりたいと思っています。そこを目指していきながら、並行して社会貢献のできるスポーツ選手になりたい。この2つをトレードオフではなく、両方釣り合いながらやっていきたいと思ってます。（終わり）

※1＝老舗の南禅寺順正

※2＝平らな道を一定スピードで走り続けるのが得意なタイプ。逃げ集団（先頭集団）の一角をなすことが多く、メイン集団にとどまった場合はチームの先頭を走って風よけになるなど、主にアシストとして活躍する。ゴール前ギリギリまでエースを牽引して最後のスプリント勝負を有利にさせる他、チームメートが戦いやすいようペースをコントロールするなどの役割がある。（ヴィクトワール広島のHPより抜粋）

※3＝全日本自転車競技選手権大会。1998年に第1回が開催された。ロードとトラックがある。ロードは例年6月に開催。

◆谷順成（たに・じゅんせい）1994年8月4日、岐阜市生まれ。各務原高から関西大に入学し、卒業後の2017年にヴィクトワール広島に入団。20年から那須ブラーゼンで活躍し、今年から宇都宮ブリッツェンに移籍。身長171センチ、体重68キロ。

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