男子100キロ級のウルフ・アロン(19=東海大)が優勝直後のインタビューで「顔はハーフの失敗作です」と自虐的なギャグを放った。父は駒大で英語を教える米国人のジェームスさん(45)で、母は美香子さん(45)。1学年上のベイカー茉秋(21)らと比べられて「顔が失敗作だと言われるんで、一度言ってみたかった」。スタンドの爆笑は誘ったが、実はなかなかのイケメン。それでも「全然ダメですよ。髪の毛が岩のりだし」と、汗で額に張り付いた短い黒髪を気にしながら言った。

 柔道は圧倒的。抜群のスタミナを武器に「3分たったら行け」という東海大・上水監督の指示を守って勝ち進んだ。試合開始から圧力をかけ続け、相手の足が止まったところで技を仕掛ける。決勝では下和田翔平(京葉ガス)にリードされたが「焦りはなかった。返せると思っていた」。残り41秒で豪快な内股を決め、逆転の一本勝ち。上水監督は「まさにオオカミが獲物を追い詰める感じですね」とウルフを評した。

 昨年3位だったこの大会で国内シニア初タイトルを獲得し、一気に世界が見えてきた。今年はウランバートル、タシケントとGP大会で2勝。「外国人相手でも自信がついた」と頼もしい。世界では通用しないと言われてきた階級だが、今夏の世界選手権では羽賀龍之介(24=旭化成)が金メダルを獲得。「いい刺激になった」と話した。

 五輪代表の本命が羽賀であることは変わらない。これから1つも負けられない状況のウルフだが「1つ1つ目の前の試合を拾っていけば、五輪に出られる」と言い切る。「東京五輪は地元だし、絶対に出たい」と話してきたウルフの前に、リオ五輪が広がった。