元世界女王の浅田真央(25=中京大)が62・03点の5位に沈んだ。

 浅田に光が差さない。今季初の真冬日を迎え、曇天に太陽が隠れた札幌の空のように、その顔は曇り続けた。「うまくいかない試合が重なると、良いイメージに持っていくのが難しい」「気持ちが下降気味に入っている」「解決方法が見つからない」。ネガティブな言葉も重なり、表情はこわばったままだった。

 違和感があった。「試合への気持ちの持っていき方が、どうなのかなと」。冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は軸が傾いた。何とか踏ん張ったが、回転不足で大きく減点。連続技は3回転フリップの回転が足りず、続けた2回転ループは1回転の判定になった。顔をしかめた演技終了まで、心身が重そうだった。

 世界選手権選考会という場を考え、SPではジャンプの難度を落とした。常に最高レベルを求めてきた心理への影響を聞かれると、「気持ちがまだ考えていることの方が大きい」とした。それだけ悩む原因と感じるのは、心情の変化だ。復帰当初は「ワクワク」だった。それがここ2戦で結果が出ず、高揚感は薄れた。シーズン序盤、「やりたいと思って戻ってきたので」と度々言った。強制はされず、何事も言い訳できない。技術、出来にも妥協は許せない。今はその自分の意思が義務的な感情を生んでいるようにみえる。

 GPファイナルでは胃腸炎で緊急帰国し、練習も十分でなかった。世界選手権は、5位でも可能性はある。ただ、代表権が悩み解消につながるわけではない。「最後の最後まで追い詰められた時、力を発揮できることが多い」。その予感が的中した時が、光が差す時だ。【阿部健吾】

 ◆浅田の全日本選手権成績 初出場の02年と03年は旧採点方法、04年から現行の採点法となる。得点基準なども変更されており、単純比較はできないが、今大会のSPの62・03点は04年の60・46点に続く低い得点で、順位では3番目に低い。シニアに参戦した05~06年シーズン以降では、ともに最低となる。