SP5位の浅田真央(25=中京大)は巻き返して3位。世界選手権代表に、女子は宮原、浅田、本郷理華(19=邦和スポーツランド)が選ばれた。

 浅田の目が潤んだ。片膝を氷上につくフィニッシュポーズから立ち上がった瞳に涙がたまった。「いろいろなことがあったので、いろいろな思いがある。自分の演技はできたので、1歩1歩ですね」。前進できた実感に、感情があふれた。

 SPでジャンプのミスが続き、「解決方法が見つからない」と困惑を明かした。試合への気持ちの持っていき方が、復帰前のように定まらない。ここ2戦ジャンプが不振で、今大会も…。気持ちを切り替えるため、恩師と徹底的に話した。

 佐藤コーチが問題視したのは、「守りに入っている」と思えること。負の連鎖に自信を失い、前を向けない姿。指摘された浅田が向き合ったのは「自分の弱いところ、マイナスなところは気持ちが引けてしまうところ」。逃げないで直視し、心が変わり始めた。

 本番、冒頭のトリプルアクセル(3回転半)は転倒したが「しっかり回った。悔いない」と弱気にならない。続く連続技も単発になったが、以降は「今できる精いっぱい。今シーズン一番のフリー」で魅せた。

 復帰後、同コーチの拠点である新横浜での練習時間を多くしたことで、対話時間は増えた。「最後は自分で乗り越えるしかない」と我慢強く、守りから攻めの姿勢に変わるのを待った。浅田は「一段と信頼関係が強くなった」とうなずく。

 次戦は4大陸選手権。恩師は現役時から数えて今年が全日本の60季連続出場。その記録に「すっごーい!」と目を丸くした。その尊敬がまた2人の絆を強くする。【阿部健吾】