五郎丸ならぬ“ゴリラ”丸が秋田中央を2年連続の初戦突破に導いた。広島工に快勝。キッカーを務めるCTB船木大夢(ひろむ、3年)が、1トライ9Gで23得点の大活躍だ。膝を深く曲げ、右腕をだらんと垂らす独特のルーティンはゴリラさながら。遊び半分の儀式が好調につながっている。前日の開会式では行進を指揮し「行進3賞」を受賞。とにかく明るく、チームをもり立てる。

 パリジャンがゴリラへと変わる。トライ後、応援団から「オー・シャンゼリゼ」の合唱が始まると、船木夢の時間だ。軽い足取りで3歩下がるとスイッチが入る。膝をズンと曲げ、上半身の力を抜く。右腕を類人猿のように左右にブンブン2回振ると、後は蹴るだけ。ボールは2本のポールを正確にすり抜けていく。「あれをやるとなぜか、入るんですよ」。野性味あふれる動きが本能を目覚めさせた。

 きっかけはノリだった。11月の県大会後、遊び半分でルーティンを入れたキックを練習すると、面白いように決まる。キッカーは別の選手だったが「これはいける!」と確信が生まれた。早大・横山陽介(2年)の動きを参考にしながら、精度を高めた。ゴリラのように見える腕の動きは「軌道をイメージしています」と説明。この日もGKを10本中9本成功させた。古谷監督は「マネしたくないけど決めてくれれば文句ない」と苦笑いを浮かべる独特のスタイルが完成した。

 とにかく明るく、フィフティーンを引っ張る。前日には開会式の行進で「イチ、ニ」の掛け声を絶叫。明るく元気な行進を見せた高校に贈られる「フィールドドリーム賞」を獲得した。毎日約4合のあきたこまちを食べ続け、昨年から7キロも増量。見た目も中身もパワフルになった。

 次戦は30日にシード校の強豪桐蔭学園(神奈川)と対戦する。「当たっていくのが持ち味なんで。やります」と気負いはない。試合後には補食のバナナも頬張り、準備は万全。期待してください、秋田中央は負けませんよ。【島根純】