日本代表33キャップを数える豊田自動織機CTB大西将太郎(37)が現役最後の試合に臨んだ。

 後半10分に途中出場し「去年までは毎試合のように出ていて、今年は出ていなかったので不安があった。それでもグラウンドに入ったら、体が覚えていた」。今季初出場で、同37分にはゴール正面からコンバージョンキックを決めた。30分間走り抜き「『時間よ止まれ!』と思っていた。このままやっていたい気持ちが強かったです」とノーサイドを迎えた。涙が頬を伝い、セレモニーでは「死ぬまでラグビーできると思っていたけれど、体がもう限界になりました」とファンに報告した。

 花園がある東大阪市出身。試合前、チーム宿舎から向かう途中「生駒山を見ているとジーンときて…」と感極まった。引退を決断したのは今月に入ってから。順位決定トーナメントを戦ううちに、最終戦の会場が花園になることが分かった。プロ選手の大西にとって引退のタイミングは「試合に出られなくなったら」。花園で最後を迎える決断を下した。「今日試合に出られたのも、けが人が続いて、たまたま順番が回ってきただけ。普通だったら試合に出られなかった。そういうところで、神様は優しかったのかなと思いますね」。スタンドには母校同大の現役ラグビー部員も集合。普段「GO! 同志社GO!」と声をそろえる応援は「GO! 将太郎GO!」に変わっていた。

 トップリーグ元年の03年度から出場し、この日が143試合目。07年W杯カナダ戦の試合終了間際にゴールキックを決め、同点に追いついたシーンはラグビーファンの記憶に深く刻まれる。会見では途中、安堵(あんど)の表情を見せて「今日の夜、痛み止めを飲まないでいいと思うと、気が楽になりました」とポツリ。今後は指導者の道も視野に入れながら、ラグビーに携わる道を探す。

 「ラグビーが大好きです。これからもラグビーに対する愛は続いていきます」

 家族、仲間、恩師、後輩、ファン…。気温5度の寒さを消すような温かい拍手に包まれ、大西はユニホームを脱いだ。