東海大がスクラムで押した。時計はすでに40分を回っている。ゴールまで残り3メートル、2メートル、1メートル。ボールが前にこぼれた瞬間、終了の笛が鳴った。あと7点、今年もわずかの差で帝京大に敗れた。「集中力で上回れなかった」。右肩脱臼のため前半で退いた磯辺主将は悔しそうに言った。

 1年前の決勝で敗れ「打倒帝京」を追い求めてきた。週2回、早朝6時半から1時間半「吐くほど」(プロップ渡辺)スクラムを組んだ。普段2、3人いる早朝練習の遅刻者が今季は0に。意識の高さが大学最強スクラムを支えた。この日も押しまくり、スクラムから3トライ。渡辺は「強みは出せた」と胸を張った。

 序盤の14点差で王者を追い詰めたが、初優勝は遠かった。後半28分、帝京大WTB竹山のトライ。「先にボールを地面につけた自信はあった」とFB野口は口にしたが、戸田主審は「副審と話し合って判断した」とトライを認めた。トップリーグでは採用されているビデオ判定は大学選手権になく、木村監督も「トライというのであればトライです」と話すしかなかった。

 あと1歩と迫りながら帝京大に3度はね返された大学日本一。就任19年目の木村監督は「次に向かって進みたい」と再挑戦を誓った。【荻島弘一】