「柔道界の沙羅ちゃん」が同じ沙羅に負けた。昨年12月のグランドスラム(GS)東京大会、2月のGSパリ大会女子78キロ超級王者の朝比奈沙羅(20=東海大)が1回戦で山本沙羅(ミキハウス)に敗れた。

 朝比奈は取材エリアで大粒の涙を流した。「初めて第1シードとなって緊張感が違った。いつもは体が流れるように動くけど、今日は無理やり体を動かしているような感じだった。『世界選手権に出ないと!!』という気持ちが先走ってしまいました」。顔をくしゃくしゃにしてそう言った。

 試合は一瞬の隙をつかれ、大外巻き込みで技ありを奪われて逃げ切られた。「いつもの攻めの柔道ができず、本当に悔しい…。追う立場になるけど、次(全日本女子選手権)は絶対に勝ちたい」と前を向いた。

 7歳の時、男子100キロ超級の鈴木桂治がアテネ五輪決勝でトメノフ(ロシア)を鮮やかな小外刈りで破った試合に感銘を受け、名門の春日柔道クラブへの入門を決意した。2歳上にはベイカー茉秋らがいた。恵まれた体格で小学生の頃から頭角を現し、世界ジュニアなど数々のタイトルを手にした。昨年4月の前回大会で左足首を骨折し、けがから復帰した同11月の講道館杯から負けなしが続いていた。