中学2年の怪物が大会最年少メダルに王手をかけた。男子シングルス4回戦で、13歳の張本智和(エリートアカデミー)が、リュボミール・ピシュティ(33=スロバキア)を4-1と圧倒し、男女を通じ史上最年少で今日4日の準々決勝に進んだ。2回戦でリオ五輪銅メダルで日本のエース水谷隼(27)を破った勢いを持続。日本勢としては79年平壌大会で金メダルの小野誠治以来、38年ぶりの表彰台が目の前に迫った。

 張本が20歳も上の「大人」からメダル挑戦権を奪った。勝てばメダル王手の大事な一戦。相手の33歳ピシュティは世界ランクこそ156位だが、1回戦で同13位の鄭栄植(韓国)から勝利を奪うなど勢いに乗っていた。だが、13歳は負けない。終わってみれば4-1と実力の違いを見せつけ「大人」を翻弄(ほんろう)。「(2回戦で)水谷さんに勝って、エイト(ベスト8)には絶対入らなきゃと思っていたので、本当に一安心した」。勝利が決まると、右手を突き上げた。

 抜群の集中力が生きた。ピシュティとは開始から接戦の展開が続く。第1ゲームはリードされる展開も7-9から3連続得点で逆転。第2ゲームも4-6から5連続得点で連取につなげた。焦る相手はレシーブの構えが整わないうちからサーブを打ってくる。「ふざけんなよ」と頭にきたが、冷静さは失わない。フォールトを取られて主審に抗議するなど、我を失う相手とは対照的に、最後まで集中力を乱さなかった。

 19年前、中国・四川省から卓球を教えるため、仙台に渡った両親の元に生まれた。すぐに卓球場が遊び場になる。2歳からラケットを握った。当時から誰よりも優れたものがあった。集中力。幼少期から絵本を読んだり、テレビを見ていると、名前を呼ばれても気付かないほどのめり込む。小学校に入っても、宿題など勉強も一心不乱に取り組んだ。球への集中力は今大会の躍進につながっている。 男女通じて史上最年少で進んだ準々決勝では、世界ランキング3位許■-同40位林高遠(ともに中国)の勝者とあたる。日本勢では38年ぶりのメダルが張本の肩に懸かる。国際卓球連盟の公式サイトでは「少年はただ者ではない。優勝候補になる」と紹介された。世界をさらに驚かす準備は万全に整っている。

 ◆張本智和(はりもと・ともかず)2003年(平15)6月27日、仙台市生まれ。2歳から仙台ジュニアクラブで競技を始め、昨春からエリートアカデミー入校。全日本選手権では小1から世代別6連覇。小3時に東アジアホープス大会(12歳以下)で8強。昨年12月の世界ジュニア選手権で男子シングルスと男子団体の2冠。家族は元選手でコーチの父宇さん、95年世界選手権中国代表の母凌さん、妹美和さん(小3)。14年春に国籍を変更し、張姓から張本姓へ。171センチ、61キロ。

※■は日へんに斤