大学バドミントンの日本と世界を制覇したエース候補が、仙台にやって来た。今季から1部に当たるS/Jリーグに昇格した女子の七十七銀行(宮城)に、龍谷大(京都)を卒業した杉野文保(あやほ、22)が4月に入行。既に同銀行の内定選手として、昨季はシングルスに出場して昇格に貢献した。今夏のユニバーシアード大会(台湾)の日本女子代表にも選出されている。

 入行から2カ月半が過ぎた。杉野の生活は午前6時30分からの朝練習、午前は銀行業務をこなして午後からは通常練習が基本。「学生と違った厳しさを痛感している」。社会人を実感しているが、七十七銀行のシングルスのエースになりうる実力と実績を持つ。

 龍谷大3年時に全日本大学選手権(インカレ)を、4年時には世界学生選手権を優勝した。女子単の世界一は日本選手初の快挙。昨年11月には七十七銀行の内定選手として、単に2勝して2部に当たる日本リーグ制覇に貢献した。草井篤監督(41)は「我慢強く、気持ちがぶれない。シングルスのエースになってほしい」と期待を寄せる。パワーヒッターで、足腰の強さとスタミナも大きな武器だ。

 2月の1部との入れ替え戦は、落とせば2部残留の窮地で単に登場した。「勝つしかないから吹っ切れた」と、気持ちを切り替えられる精神的強さ。2-0のストレートで制し、第2複の2人に流れを引き寄せた。昇格によって、リオデジャネイロ五輪銅メダルの奥原希望(22=日本ユニシス)らと、S/Jリーグで対決するチャンスも来た。

 「ラリーの質が違い、決め球が返ってくる」と、大学とのレベル差を感じている。これまでの実績はもう「ゼロ」と言い、社会人選手と対等に戦うために練習を積む。試合中は声を出しながら動き回ることから「怪獣と呼ばれていた」と笑う。8月のユニバーシアードなどをへて、迎える11月開幕のS/Jリーグ。「個人戦より団体戦が好き。みんなで盛り上がれるから」。“怪獣”はチーム思いで心優しい。【久野朗】

 ◆杉野文保(すぎの・あやほ)1994年(平6)11月22日、兵庫・神戸市生まれ。小4からバドミントンを始める。園田学園中・高に進み、高校3年の全国高校総体は16強。連覇を狙った龍谷大4年時のインカレは準優勝。163センチ。右利き。家族は両親。