男子66キロ級決勝で初出場の阿部一二三(20=日体大)がミハイル・プリャエフ(ロシア)に袖釣り込み腰で一本勝ちし、金メダルを獲得した。日本勢は第1日に続いて男女ダブル金メダルとなった。

 待ちわびた初の大舞台で躍動し、男子66キロ級の頂点へ駆け上がった。阿部は闘志をほとばしらせ、世界の強豪を荒々しく豪快になぎ倒していった。「圧倒的な力を見せつけて優勝する」。迫力十分の鋭い眼光で臨み、金メダルを獲得した。

 相手を根こそぎ引っこ抜くような担ぎ技の破壊力は抜群だ。腰を引いて逃げられても、捕まえてしまえば一瞬で勝負を決める。ブシタ(モロッコ)との3回戦は体落とし、14年大会3位のザンタラヤ(ウクライナ)との準々決勝は背負い投げを見事に決めた。会場を沸かせた勢いそのままに準決勝、決勝まで6試合を勝ち抜いた。

 兵庫・神港学園高2年時の14年に、男子史上最年少で講道館杯を制して、20年東京五輪の星として注目を浴びてきた。

 華のある柔道、端正な顔立ち、旺盛な闘争心はスター性十分。男子60キロ級で五輪3連覇の野村忠宏に憧れて、ジュニア時代から五輪の金メダルをずっと夢見ている。

 昨年のリオデジャネイロ五輪代表を逃し「この悔しさを晴らせるのは東京五輪だけ」とじっくり牙を研いできた。3年後への「第1章」と位置付ける大会で、日本柔道界の未来を背負う男が1つ目の勲章を手にした。

 ◆阿部一二三(あべ・ひふみ)1997年(平9)8月9日、兵庫県生まれ。6歳から柔道を始める。兵庫・神港学園高2年の時、17歳2カ月の史上最年少で講道館杯を制覇。16年グランドスラム(GS)東京、17年GSパリ優勝。世界ランキング4位。得意技は背負い投げ。尊敬する人は野村忠宏。妹は17年グランプリ大会(ドイツ)52キロ級優勝の詩(うた)。168センチ。