【モントリオール=矢内由美子】種目別決勝の男子床運動で予選首位の白井健三(21=日体大)が15・633点をマークし、15年に続き、2大会連続3度目の金メダルを獲得した。2位に1・100点差をつける圧勝だった。同種目での優勝3度は日本人最多。白井の世界選手権と五輪でのメダル数は合計9(金5、銀2、銅2)となった。

 白井は、予選で2位の選手につけた0・733点差をさらに広げる1・100点差で圧勝した。「シライ」の名のつく高難度技を3つ組み込んだ超次元の演技で他を寄せ付けなかった。

 「今年は“他人と比べない床運動”を目指して、4月からずっとそれをやり続けてこられた。周りも(優勝を)諦めてくれているようなリアクションだった」

 やる前からライバルが白旗を上げるといえば、12年ロンドン五輪前後の内村と同じだ。「航平さんもこういう感じだったのかなと思った」。負傷の内村が不在の中、個人総合で3位と大健闘した21歳は、数日間で1段階上のたくましさを身につけていた。

 演技構成の難度で群を抜くスタイルは今までと変わらないが、今回は演技の出来栄えを示すEスコアで評価を高めていることにも価値がある。床運動のEスコアは予選が8・566、個人総合決勝が8・533、そして種目別でも8・433と高レベルを維持した。以前は膝が割れるなどして減点されることが多かったが、豊富な練習量で克服。種目別決勝では8人中2番目に高い点だった。

 これが、6日に発表された「エレガンス賞」にもつながった。最も美しい演技をした選手に贈られる同賞は、内村が3度受賞していることでも知られる。「一番無縁だと思っていた賞なので正直びっくり。自分で良いのかな。それでもそう見てもらえる体操をしているというのは、すごく自信や励みになる」。美しさを兼ね備えたひねり王子は、満足そうに言った。

 ◆種目別3度の優勝 五輪、世界選手権を通じて1種目で3度の金メダルを獲得した日本選手は白井で3人目。鉄棒で小野喬が56年メルボルン、60年ローマ五輪と62年世界選手権、つり輪で中山彰規が68年メキシコシティー、72年ミュンヘン五輪と70年世界選手権を制している。