花園初出場の昌平(埼玉)が、八幡工(滋賀)との接戦を制して初勝利を挙げた。昌平ラグビー部に新たな歴史が刻まれた1戦だった。

 前半終了間際残り4分。自陣ゴール手前まで攻め込まれる苦しい場面でも、決してトライを許さなかった。主将のロック岡田大生(3年)も「あそこでトライを取られたら、後半にも流れがつながらない思った。早く笛が鳴ってくれと願いながら、強く押しに行った」と振り返る。

 スーパーラグビー(SR)レッズの分析担当として11年の優勝に貢献した実績もあるキース・デービスコーチ(57)に4月から守備面での指導を仰ぎ、昌平の特徴でもあるダブルタックルが定着した。FW平均身長が168センチと小柄なチームだが、スピードのある素早い動きで守備の穴を作らない。

 8月の菅平の合宿では、昨年よりも日程を3日延ばし、今までなかったランニングもメニューに取り入れた。練習試合の内容が悪かった時は、取られたトライの数だけスキー場の傾斜のきついゲレンデを往復。2週間の合宿で、1人100キロ以上走り込んだ。

 キースコーチの指導と、走り込みの成果は花園でも体現した。岡田は「走り込んだことで体力に余裕ができて、押し込まれて苦しい前半終了間際のような場面でも、冷静な判断ができるようになった」と語る。キースコーチは「うちの技術とスピード面が良く出ていた試合だった。次も早いスピードで戦ってほしい」と選手たちにエールを送った。

 2008年に御代田誠監督(46)が就任した際には、部員が3人しかいなかった。御代田監督は「1つのことをやり遂げるのには10年かかると言います。まさに今年が10年目で、昌平のラグビー部に新しい歴史を刻めてうれしい」としみじみ語った。入学するかどうか悩んだ上に昌平を選んだ選手には、入学後に監督自ら手書きのラブレターを送った。埼玉県予選決勝の前日にも、25人のメンバー全員に同じように送った。岡田に届いた、監督からの心のこもったメッセージは入学時も決勝の時も同じだった。「昌平を選んでくれてありがとう」。

 30日の2回戦は、2連覇を狙う東福岡と対戦する。御代田監督は「鍛えた走力が、どれだけ通用するか楽しみ。もう1度守備面も整理して、30日に臨みたい」と力強く言い切った。