わずか3校のみが予選に参加する福井の若狭東が、県勢最多得点で初戦を突破した。部員は全員が高校からラグビーを始めた。朽木雅文監督(45)は「福井県は3校で頑張っている。次への挑戦権を取れたのが、チームにとってプラス」と素直に喜んだ。

 なぜ、ここまでのチームを作り上げられたのか。指揮官は正直に理由を説明する。

 「うちはサイズがない子が多い。だからボールを動かすしかない。そのために、割り切っています。スクラム、ラインアウトモールなど、時間がかかるところは落とし込めていない」

 この日のFW平均身長は168・75センチ。空中戦の主役となるはずの両ロックも168センチと166センチだ。今大会に出場しているチームどころか、各地区の予選で散る多くのチームよりも小柄といえるだろう。

 そのハンディを工夫で克服してきた。前半3分には、相手陣で左にボールを展開。SH西村-CTB野村とつなぎ、スピードを上げて大外でボールを受け取ったのはSO瀬野だった。WTBのような動きで、待望の先制トライ。ここにもチームのこだわりが隠れる。

 瀬野 番号にこだわらず、どのポジションでもやることをこのチームは意識しています。最初は僕がSOとして固定されていたんですが、僕が間に合わなかったら、自分たちのアタックができなくなって困ったんです。それから、どこでもやろうという形でやってきました。

 18年には自県開催の国体を控える。現在は月1回、若狭東、若狭、敦賀工の3校で合同練習会を行う。時には3校合わせてマイクロバス1台に乗り、三重や滋賀、岐阜などへの遠征も行う。今大会終了後も、新チーム最初の練習は、年明けの合同練習を予定している。

 朽木監督は自信を持って言う。

 「顧問も3人とも仲がいい。なかなか結果が思うように出ないけれど、私が見てきた中で、今年のチームは一番力があります」

 30日の2回戦では尾道(広島)と戦う。目指すは過去最高に並ぶ3回戦進出。福井県の希望を背負い、“初心者軍団”が花園での年越しを狙う。【松本航】