日本スケート連盟は30日、男女8人ずつ合計16人のスピードスケート平昌(ピョンチャン)五輪代表を決定。本紙評論家で長野五輪女子500メートル銅メダリストの岡崎朋美氏(46)と4大会五輪出場の青柳徹氏(49=日体大監督)は、92年アルベールビル大会の過去最多4個の倍増となる8個のメダル獲得を予想した。

 史上最多メダルを予想した2人だが、大盤振る舞いをしたわけではない。岡崎氏は5大会、青柳氏は4大会の五輪経験がある。4年に1度の大舞台の怖さを誰よりも知る。昨年から500メートルで全勝を続ける小平について、ともに金メダルとは断言しなかった。

 岡崎氏 金メダルの可能性は高いが(五輪連覇中の)李相花(韓国)にとっては自国開催で国民の期待も大きい。この1カ月で仕上げてくるはず。

 青柳氏 確かに李はメンタルが強い。韓国のチームリーダー的存在だし、500メートルは1つのミスが命取りになる。

 2人は五輪の魔物を間近にしてきた。

 岡崎氏 ソルトレークシティー五輪では金メダル候補のウォザースプーン(※)が転倒。何が起こるか分からないのが五輪。私自身は「五輪は私のもの」と思って臨んできたので、国内選考会よりも緊張はしなかったけど、何とも言えない独特の雰囲気はある。

 青柳氏 五輪はW杯、世界選手権とは注目度も雰囲気もまったく違う。自分も地元長野五輪ではアップのとき、右手と右足が一緒に出た。4回目だったけど、五輪に慣れることはなかった。

 2人はともに小平の女子500メートル金メダル確率は60%と予想した。

 小平だけでなく、高木美も1500メートルでは今季W杯4戦全勝で五輪に臨む。

 岡崎氏 連勝のことは考えず、いつも通りやるべきことをやる。でも2人とも記録を出しているし、自信はついているはず。特に(小平)奈緒ちゃんは「いつ五輪が来てもいい」と言っていたから。

 青柳氏 五輪はW杯ファイナルではない。実績などはすべて捨てて白紙に戻し、無の状態で臨んでほしい。2人とも連続金メダルを狙うわけではない。小平は個人種目のメダルはなく、高木美は前回落選している。ともにチャレンジャーの気持ちを忘れないでほしい。

 今季W杯3戦全勝で、2度の世界記録を出した女子団体追い抜きはともに金メダルと断言した。

 青柳氏 2位オランダと3、4秒差ある。自分たちのレースを繰り返せば安全圏ではある。ただし、エースの高木美頼みではだめ。金メダルを確実にするためにも、各自のクオリティーをもう1段階上げてほしい。

 岡崎氏 女子は金メダルを逃す方がサプライズ。W杯4戦で2位と4位に入った男子にも銅メダルを期待したい。

 お家芸だった男子500メートルは、ともにバンクーバー五輪銅メダルのベテラン加藤をメダル候補に選んだ。

 岡崎氏 男子500メートルは大混戦。0秒2の間に10人くらいがひしめく。(加藤)条治にはずばぬけた集中力がある。ベテランならではのピーキングにも期待したい。

 青柳氏 500メートルは2回滑走から1回滑走に変更。ベテランの加藤は一発勝負に強いし、体力面でもプラスだ。

 メダルゼロの前回ソチ五輪から日本連盟はナショナルチームを結成。オランダ人コーチを招き、トップ選手の集中強化を図った。ともに大量8個のメダルを予想するほど、日本スケート界はV字回復に成功した。

 青柳氏 今回は再起のスタートにすぎない。初五輪の選手、復活途上の男子は平昌をステップに、次の22年北京、その次の26年に招致されるかもしれない札幌への飛躍につなげなければならない。【取材・構成=田口潤】

 ※ウォザースプーンの悲劇 W杯6戦4勝と絶対的な金メダル候補で迎えた02年ソルトレークシティー五輪。当時2回滑走の男子500メートル1回目で、スタートから5歩目で転倒した。世界記録を保持していた1000メートルでも300メートル付近でバランスを崩し13位に沈んだ。