後半ロスタイム、あと1トライで同点という場面で、トライを奪えなかった。

 2大会連続の4強という結果に、CTBの竹下日向(3年)は「桐蔭は例年BKのチームと言われているけれど、今年はFWが強い。でもそのなかでBKとして取りきれなくて悔しい」と肩を落とした。ロスタイム敵陣ゴール前1メートルで、フィフティーンが選択したのはFW勝負。フロントロー3人を中心に押し続けるも、反則を取られノーサイドの笛が鳴った。「相手のプレッシャーはすごかった。けれど、外でBK勝負したかったな…」と悔しさもにじませた。

 竹下は「若松大智」と刺しゅうされた短パンで花園全試合を戦い抜いた。若松は竹下と同じCTBで、3年間ずっと切磋琢磨(せっさたくま)し、17年4月全国選抜大会でも両CTBとして初優勝に大きく貢献した。ともに最後の花園へと誓っていた矢先。12月、メンバー選考もかかった流通経大柏との練習試合で、若松は右足すねを骨折してしまった。最後の花園に出られない悔しさは、若松の胸にずっとあった。花園へ出発する直前、学校の部室で、若松は竹下に話しかけた。「この短パンをはいて、花園に出てくれないか-」。自分の名前が刺しゅうされた短パンを竹下に手渡すと、竹下は「もちろん」と答えた。

 若松はスタンドで大きな声を出して、フィフティーンの花園を見届けた。「悔しさももちろんあるけれど、そのぶん日向(竹下)が自分の分までプレーしてくれてうれしい」。竹下も「若松も含めた、みんなの思いを背負って戦う」と話していた。

 竹下は、高校卒業後は早大に進学し、ラグビーを続けながら指導者、社会科教師への夢を追う。「ラグビーに関わる仕事をしたい。藤原監督の下で『考えるラグビー』を3年間学んできて、恐れ多いけれど、いつかは藤原監督のような指導者になりたいです」。桐蔭学園での3年間を糧に、夢へと前進を続ける。