サントリーが、最強の挑戦者をはねのけて2季連続2冠を達成した。今季無敗のパナソニックを12-8で下し、日本選手権は8度目、トップリーグ(TL)は5度目の制覇。前半を12-5とリードして折り返すも、後半は無得点。苦しい時間が続いたが、鍛え上げてきた体力を生かし、粘りの防御で競り勝った。昨年10月のリーグ戦で公式戦連勝記録を28で止められたライバルへのリベンジを果たし、再び頂点に立った。

 粘りの防御に王者の底力が表れた。後半40分を過ぎ、自陣残り5メートルでの相手ラインアウト。トライを許せば優勝をさらわれるラスト1プレーで、15人の思いが1つになった。密集で圧力をかけ、相手の反則を誘う。勝利が決まると、オーストラリア代表103キャップを誇るSOギタウが興奮気味に拳を握り、SH流主将の目には涙がにじんだ。3度宙を舞った沢木監督は「自己満足の練習をしてこなかったことが最後の状況判断につながった」。柔らかな表情を浮かべ、戦い抜いた選手をたたえた。

 指揮官が「サントリーのプライド」と絶対の自信を持つ運動量が、守勢に回らされた後半34分からの勝負どころで生きた。ボールを保持すると、ミスや反則を犯さず、38回の連続攻撃を展開。相手以上に走り、次々と選手がサポート役に回った。パナソニックを敵陣にくぎ付けにし、ホーン直前まで約5分間ボールを保持。流は「パナ相手にあれが出来るのは僕らしかない。苦しかったが、最後はフィットネスの少しの差が出た」と胸を張った。

 連覇に向け、「昨季超え」「インターナショナルスタンダード(世界基準)」をテーマに掲げた。無敗でシーズンを終えた昨季は、試合中の肉弾戦で倒れた選手は2秒以内に立ち上がる規律を作ったが、今季は2秒以内に立ち上がるのは当然、そこからいかに次のプレーに参加出来ているかを求め、その確率を数値化した。意識したのは強豪イングランド代表の平均70%。立っているだけの選手を「かかし」と呼び、クラブハウスに全選手のデータを張りだすなど厳しさを共有。ピッチ上の15人が80分間サボらない、世界に通用するチームを目指した。

 ライバルとの頂上決戦を制し、最高の形でシーズンを締めくくったが、沢木監督に緩みはない。6月には世界最高峰リーグ、スーパーラグビーの海外チームとの強化試合も計画する。「成長が止まれば衰退の始まり。全チームのターゲットになるのをご褒美だと思って成長していきたい」と早くも来季を見据えた。貫禄のV2。サントリーが常勝軍団への足場を固めた。【奥山将志】