ノルディックスキー・ジャンプ男子で11月中旬のW杯開幕戦で右肩を亜脱臼して以来、休養していた伊東大貴(32=雪印メグミルク)が15日、56日ぶりにジャンプを飛んだ。まだ痛みは残るが、4大会連続代表に選出されている2月開幕の平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)出場に向け、リハビリに励み、復帰にこぎつけた。順調なら26日のW杯ザコパネ大会(ポーランド)に出場予定。ベテランが逆境を乗り越えメダルを目指す。

 降りしきる雪に不安定な風が舞う、札幌・宮の森ジャンプ競技場。伊東はジャンプ台に上がっても、すぐには飛び出せない。恐怖と不安が心を支配した。痛みもまだ残るが、意を決して飛び出すと、雪を蹴散らし、空中を進んでいった。2回飛び、ともにK点(90メートル)付近で着地。さすがに豪快に、とはいかないが、11月中旬に右肩を亜脱臼して以来、56日ぶりのジャンプ。復活への確かな1歩を記した。「冗談じゃなく本当にびびった。練習が不安を小さくしてくれると思う。それをなくしていきたい」と前を向いた。

 悪夢からはい上がってきた。11月19日のW杯開幕戦。126メートルの大ジャンプを飛んだが、着地でバランスを崩し転倒。緊急帰国し右肩の亜脱臼と診断された。当時は「今季はだめかも」と思うほどの強い痛みが襲い、日常生活にも支障をきたすほどだった。それでも、痛み止めの薬を飲みながらほぼ毎日、治療と3時間のリハビリをこなした。

 11日には4度目の五輪代表入りが正式決定。「こんな状態の僕を選んでくれて責任感が生まれた」。葛西紀明(土屋ホーム)ら海外を転戦するW杯組の活躍を「うらやましい」と刺激にもした。代表としての誇りと競技への強い思い。ケガを乗り越え、この日の復帰にこぎつけた。「医者やトレーナーと相談し、逆算すると今週がぎりぎりだと思って飛んだ。五輪までに状態をベストに持っていきたい」と決意する。

 今週1週間、札幌で練習をこなし、早ければ26日のW杯ザコパネ大会で実戦復帰する予定だ。「試合勘もあるので五輪まで1回は試合に出たい」と話す。帰ってきた頼れるベテランが、メダル取りへ再スタートを切った。【松末守司】

 ◆伊東と国際大会 五輪代表は06トリノから4大会連続4度目で、過去3大会の最高成績は個人が14年ソチLHの9位で、団体もソチ(LH)で銅メンバーとなった。世界選手権は07年、09年の団体LHで銅、混合団体NHでは13年に金、17年に銅メダルを獲得。W杯では個人で通算4勝している。