注目の女子52キロ級は17年世界選手権銀メダルの角田夏実(25)が決勝で世界女王の志々目愛(24=ともに了徳寺学園職)を下し、初優勝した。

 ともえ投げがさえた。昨年の世界選手権決勝の再現となる志々目との決勝。延長46秒、角田はともえ投げで技ありを奪い、初優勝を決めた。「ここで優勝しないと先はないと思った。リベンジしたかったし、1試合1試合楽しめた」と満足げに振り返った。

 苦難が続く。昨年6月に寄生虫アニサキスによる食中毒を発症。同7月のスペイン合宿では乱取りで鼻を骨折した。同8月には右足甲を剥離骨折し、世界選手権に強行出場して銀メダルを獲得した。全国各地でおはらいもしたが、今大会2週間前にはぎっくり腰になった。「周りからは『本当によくけがするな』と言われるし、毎月のようにけがしています」と苦笑いした。

 「関節技のスペシャリスト」として知られ、世界選手権以降は寝技に引きずり込むためのともえ投げを強化した。ともえ投げを意識しすぎて技がかからない時期もあったが「無心」で繰り出す緩急あるともえ投げを編み出した。「自分の柔道は相手を誘いながら攻める。はまりました」。

 夢のケーキ職人に憧れて柔道は高校で“卒業”する予定だった。東京学芸大時代には、一時は引退も考え「柔道が嫌いになった」が16年秋頃から快進撃が続き、その才能が開花した。

 今大会を制し、9月の世界選手権(アゼルバイジャン)代表の2枠目での選出に可能性を残した。「もう1度、金メダルを取りにいく」。寝技職人が代表入りへ強い意欲を燃やした。【峯岸佑樹】