20年東京オリンピックの新種目「スポーツクライミング」のボルダリング・ワールドカップ第5戦が6月2、3日に東京・八王子市エスフォルタアリーナで行われる。今季これまでのW杯4戦で日本人選手が優勝してきた。連載「ここに注目! ボルダリングW杯」では5回にわたり注目選手などを紹介する。第1回は、W杯第2戦で優勝した楢崎智亜(21=TEAM au)の今大会に懸ける思い。

 楢崎は昨年大会の悔しさと勝ちへのこだわりを原動力に、「優勝しかない」と言葉に力を込める。昨年大会の決勝。第3課題まで首位で進み、優勝が期待された中で右手指の筋を伸ばすけがに見舞われた。「最終課題は自分の登りができなかった」。2位となり、表彰台では悔し涙を流した。

 今季は第2戦モスクワ大会で優勝するも、続く中国での2連戦はともに決勝進出を逃した。「モスクワの優勝で気持ちに余裕が出て、勝ちへの執念が足りなかった」と振り返った。

 16年シーズン開幕前、W杯で成績が出せずにいた楢崎は、女子の第一人者野口啓代の言葉から勝負の神髄を学んだ。「泥臭くても勝った方がかっこいい」。強い体や技術で登ることより、勝つことに重きを置き「勝てれば、その泥臭さもかっこよく思える」と心機一転。16年はW杯初優勝を含む2勝、世界選手権も制し、突破口が開けた。

 今季から、完登までのトライ数よりも、壁の途中の「ゾーン」の高度に達した回数が順位を決める際の優先項目になった。楢崎は第4戦、準決勝第2課題でゾーンを取れなかったことが敗因になった。「新ルールの面白さを実感できたことは収穫」と経験も糧に勝ちをつかみにいく。【戸田月菜】