第一人者の野口啓代(29=TEAM au)が、複合の初代国内女王に輝いた。

 東京五輪でも採用される複合(スピード、ボルダリング、リード)が、国内大会で初めて行われた。野口はスピード3位、ボルダリング1位、リード2位で、3種目それぞれの順位のかけ算で算出される総合ポイントを6ポイントとし優勝。「初代女王の実感はまだない。スピードで昨日の予選から1つ順位を上げて3位に入れて、良い流れでスタートを切れた」と笑顔で話した。

 野口は第1種目のスピードで3位決定戦を12秒06で制し3位につける。第2種目のボルダリングでは唯一4課題すべてを完登(かんとう)し1位。2種目を終えた時点で伊藤ふたば(16=TEAM au)と総合ポイントで並んだ。野口は「リードの結果次第で優勝が決まる。優勝したい」と強い気持ちを持って臨んだ最後のリード。「登りながら、何度もよれ(疲れて登れなくなりそうになること)を感じて、ここで落ちたらまずいなと思いながら登った」。身長165センチの野口は、指先間174センチの長い手足を生かして、確実にホールド(突起物)をつかみゆっくりと登っていく。15メートルの壁の頂上付近、38手目をつかむ途中で力尽きリードを2位で終えた。

 東京五輪と同じ順位決定方式での試合を初めて経験し「女子は世界で3種目ともできる選手が多いので、(総合ポイントで)1けたじゃないと勝てないと思った」。今季からW杯でスピードにも参戦しているものの、国内にスピードの練習施設が少ないこともあり「中国のW杯(5月中旬)から1回しか練習していない。1カ月に1回とか、大会前に感覚を思い出すくらい」。順位が決まる上でのスピードの重要性を再確認し「今はまだまだ埋めるところが多い」と言った。

 東京五輪は、全4日間の日程で行われ、男女各20人がスピード、ボルダリング、リードの順で予選を行い、各種目の順位を掛け合わせたポイントが少ない6人が最終日の決勝に進出する。決勝は今大会同様に1日で、求められる能力の異なる3種目をこなす。複合を経験したことで、野口は「リードの時点でエネルギーが切れて、まだまだ体力が足りていない。3種目を1日にぐるぐるやる練習をやるしかない」と体力面でも今後を見据えた。

 女子は伊藤ふたばが9ポイントで2位、谷井菜月(14=奈良・光陽中)が16ポイントで3位、野中生萌(21=TEAM au)が20ポイントで4位となった。