世界28位の錦織圭(28=日清食品)がツアー通算350勝目で、2年ぶり3度目の16強入りを果たした。同18位で第15シードのニック・キリオス(オーストラリア)に6-1、7-6、6-4のストレート勝ち。9日に予定されている4回戦では、同138位で予選勝者のエルネスツ・ガルビス(ラトビア)と対戦する。

 午後9時4分。夕闇が迫る天に向け、錦織が久々に心からのガッツポーズを繰り出した。最後にキリオスがフォアをネットにかけると、両手を突き上げた。「芝人生の中でトップのプレーができた。優勝候補になる相手。その相手に勝てたのはうれしい」。最高のテニスだった。

 何もかもが当たりに当たった。スタートからエンジン全開、10本連続で第1サーブが入った。第1セットの第1サーブが入った確率は驚異の85%。加えて相手の時速230キロ近いサーブをことごとく返球し、ミスを誘った。「サーブとリターンは、ベストの日だった」。

 第2セットのセットポイントでは、開き直った相手が観客をどよめかす矢のようなリターンを放った。しかし、それをフォアで合わせ、カウンターで返球。「あんなの、日常茶飯事」と照れながら冗談を言うほどのスーパーショットが飛び出した。

 開始が午後7時27分。第3セット後半には、日没が迫っていた。「絶対に終わらないと思っていた」。翌日の8日、日曜は休養日。試合はない。日没順延だと再開は9日の月曜になる。「(だから)早く終わらせたいと、より集中してガッツも入れてやっていた」。

 自身初めて16強入りした14年に同じ状況があった。1週目の土曜の3回戦が遅くなり、最終セット3オールで、日没順延になった。月曜に勝ったが、中日の日曜も緊張を維持しなくてはならず、火曜の4回戦では精根尽き果てて敗れた。その形だけは避けたかった。

 ベストな状態で4回戦を迎える。相手のガルビスには過去2戦全勝だが、元トップ10で「急にここで調子を上げてきている。危ない選手」と警戒する。勝てば自身初のベスト8入りとなり、同時に日本男子初の4大大会すべてで8強以上の快挙達成となる。【吉松忠弘】

 ◆WOWOW放送予定 9日午後7時25分から。10日午前1時から。ともにWOWOWライブ。男女シングルス4回戦ほか。生放送。