【バクー=峯岸佑樹】女子78キロ超級で前大会準優勝の朝比奈沙羅(21=パーク24)が初優勝した。決勝ではリオデジャネイロ・オリンピック(五輪)銀メダルのオルティス(キューバ)に指導3の反則勝ち。日本女子は個人戦の代表9人全員が表彰台に立ち、初の快挙となった。

雪辱を果たした。決勝は昨年と同じ延長戦にもつれた。朝比奈はオルティスに果敢に突進し、どっぷり組み合って得意の払い巻き込みを連発。6分24秒の熱戦に終止符が打たれた。「昨年の負けから389日たって、この景色を見るためにやってきた。勝ち切れたのは成長した証し」。1年ぶりに“沙羅ちゃんスマイル”が飛び出した。

葛藤の1年だった-。幼少期からの夢が五輪金メダルと医師だった。昨年9月に本格的な医学部受験に向け、勉強時間確保のため東海大女子柔道部を「卒部」した。4月の国内大会ではアジア女王の素根輝(18=福岡・南筑高)に2連敗。さらに“二刀流”を目指すことで柔道、医療関係者から批判の声が上がった。「全ては結果で見返す」。柔道界で前代未聞の道を進んでいることを自覚し、不屈の精神と強い覚悟を持って今大会に臨んだ。前大会の銀メダルは、ベッド横に画びょうで差して戒めにした。柔道力をつけるために単身でモンゴル修行を敢行するなど独自の調整で鍛錬。モンゴル相撲の横綱らと組み合って、繊細な体の使い方を学んだ。今春から週1日、予備校にも通い、医学部の編入試験にも挑戦した。

20年東京五輪で現役引退する。リオ五輪代表に落選した時からサンダルにブラジルカラーのミサンガをつけて、常に五輪を意識する。柔道人生も残り2年。「夢で終わらせない。今日がスタート地点。先の景色を見て、もっともっと強くなる」。世界一の称号を手にしても走り続ける。