10年バンクーバー・オリンピック(五輪)銅メダリスト高橋大輔(32=関大KFSC)が4年ぶりの復帰戦で77・28点をマークし、首位発進を決めた。18年世界選手権5位の友野一希(20=同大)は70・94点の3位、中村優(しゅう、22=関大)が71・99点で2位に入った。

高橋の新プログラムは坂本龍一作曲の「The Sheltering Sky」。冒頭に左足のケガを感じさせないトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を決めると、続くフリップ-トーループの連続3回転も着氷。演技後半には3回転ルッツも降り、大きなミス無く滑りきった。「むちゃくちゃ緊張しました。『とりあえず終わった』という感じ。大きなミス無く終われて、安心感がありました」。観客はスタンディングオベーションで復帰戦を祝った。

プロスケーターとしてアイスショーなどには出演してきたが、明るいリンク、6分間練習など久々な体験が多かった。演技を終えると、得点表示を待たずに控室に戻ろうとする場面もあった。「スコアが出るのを忘れていて『そういえば点数出るんだ』と思いました。それより安心感で、早く着替えたかった」。そう笑うほど、競技会の空気は懐かしかった。

この日は大会史上初となる有料開催。前売り券で完売し、関係者によると座席数の約10倍の応募があり、抽選を行ったという。開会式が行われた5日には、ファンからの期待について「それを考える余裕すらないぐらい緊張すると思うので、全然分からないですね。どんな演技を見せたいっていうより、とにかく必死にやりたい」と語り、競技会のリンクに立った。

現役復帰を決断したのは17年12月の全日本選手権(東京)後。テレビの仕事で携わり「(平昌)五輪に向けて戦う選手たちの姿。個人個人がそれぞれの思いや目標を持ってやっていました。僕は現役の時に世界を目指して、世界で戦うためにやっていましたが、全日本選手権で結果を残すために、自分自身を追い込んでやっていく姿に僕自身も感動したというところがありました。そういう戦い方もありなんじゃないかと思いました」。7月1日の現役復帰表明会見でそう語ったように、今の高橋にしか見せられない姿を披露するシーズンが始まった。

◆高橋大輔(たかはし・だいすけ)1986年(昭61)3月16日、岡山県生まれ。8歳からフィギュアスケートを始める。02年世界ジュニア優勝。06年トリノ五輪8位。07年世界選手権2位。10年バンクーバー五輪銅メダル、世界選手権優勝。12年世界選手権準優勝、グランプリファイナル優勝。14年ソチ五輪6位。同年10月に引退。血液型A。