【ヘルシンキ=高場泉穂】羽生結弦(23=ANA)が、4回転半ジャンプ(クワッドアクセル)を来年3月の世界選手権(さいたまスーパーアリーナ)で初挑戦する可能性が浮上した。

フリー190・43点、合計297・12点とルール改正後では世界最高点をマークし、GP初戦初優勝。4回転半ジャンプは、全日本選手権(12月、大阪)後にも練習を再開する見通しを示した。

GP初戦初制覇を果たした羽生は、試合後、目標のクワッドアクセルを「今季中にやりたい」とあらためて宣言した。実戦投入への準備は「全日本後かなと考えています」。ただ今の精度は「5%ぐらいですかね」と話し、実戦投入に慎重な姿勢もみせた。「100%といえるジャンプは自分の中にはない。(得意のトリプル)アクセルさえも100%とはえいない。ただ、20%でいけるかな。5%の壁が分厚くて、その分厚い壁を破っているほど時間を割くものではない。とりあえず全日本までは練習もできないかと思います」。

12月末の全日本選手権の結果次第だが、代表に選ばれれば次戦は3月にさいたま市で行われる世界選手権となる可能性が高い。続く4月の国別選手権も福岡開催。その間、5%の壁を破り、順調に大技の準備が進めば、日本での初成功が実現するかもしれない。

ただ、今回の結果は、その4回転半の練習を休んだからこそなし得たものだった。9月の初戦オータムクラシックまでは早期の習得を目指して練習を続けてきた。だがジャンプの転倒ミスなど納得できない内容に終わると「今こんなこと練習している場合じゃない」と気持ちが変わり「(4回転半を)跳べないと、となっていたのを、こんなにも技術が足りないじゃん、と突きつけられた」。

勝つために大技習得をいったんあきらめ、この1カ月間をプログラムの滑り込みに注力した。それが、フリーでの史上初の4回転トーループ-トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を含むすべてのジャンプ着氷につながった。「自分の中ではいい演技。そこそこいい演技ができると、ごほうびじゃないですけど練習してよかったという瞬間に立ち会える。それを感じていたい」。年内は演技の精度を高めることに集中する。

回転不足など細かなミスがまだあったからこそ、「また自分の灯火に薪(まき)が入れられた」。大技に挑む楽しみは先に取っておき、「勝たなきゃ自分じゃない」と2週間後のGPロシア杯(モスクワ)で完璧な演技と勝利を目指す。