16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)男子73キロ級金メダリストの大野将平(26=旭化成)が復活の優勝を果たした。五輪2大会連続銅メダルの海老沼匡(パーク24)との決勝では、残り15秒で隅落としで技ありを奪って優勢勝ちした。

ともに激しい組み手争いを繰り広げる決勝の均衡を破ったのは大野だった。残り15秒、内股に入ってきた海老沼の体勢を崩すと背後からめくり返した。隅落としで技あり。後は海老沼の猛攻を耐えた。準決勝でも残り1秒から内股で一本勝ちし、「我慢強く対応できた結果」と粘りの柔道に自信を口にした。

4月の全日本選抜体重別選手権で敗れた海老沼に雪辱した。「今日はこれ以上ない打ち合いで、お互いに攻撃的にやり合えたのは誇り」。柔道私塾「講道学舎」の先輩へ尊敬を示しつつ「4月に先輩に土をつけてもらって目が覚めた。73キロ級は大野将平の階級と見せつけないといけないと、自分にプレッシャーをかけた」とリオ五輪王者のプライドをにじませた。

金メダルを獲得した8月のジャカルタ・アジア大会後、連覇を狙う東京五輪に向かう新たな取り組みとして、ボクシング元世界2階級制覇王者の井岡弘樹氏(49)に“弟子入り”した。大阪市内のジムでミット打ちやサンドバッグ練習など2時間ほど拳を打ち込み、井岡氏が「右ストレートのパンチ力は本当にずぬけている」と舌を巻くほどのセンスを見せつけた。

この日は井岡氏も観客席の最前列から見守った。大野は「脇を締めた方がいい」との助言も胸に、ボクシングさながらの構えから相手の襟を鋭くつかむ攻撃的な柔道を貫いた。「ボクシングはまだ1回しかやっていないので分からない」としつつも「継続してやりたい」と意欲。井岡氏も「また来てほしいね」とラブコールを送った。【戸田月菜】