女子57キロ級の伊調馨(34=ALSOK)が、オリンピック(五輪)5連覇を目指す20年東京大会へ大きく前進した。

同級世界女王でリオ五輪63キロ級金メダルの川井梨紗子(24=ジャパンビバレッジ)と決勝で対戦。終了間際に2ポイントを奪い3-2で逆転勝利。旧階級を含めて3年ぶり13度目の優勝を果たし、川井の4連覇を阻んだ。

試合後の伊調は「厳しい戦いになるのはわかっていた。最後(ポイントが)取れて良かったです」と話した。第1ピリオドで先制されるなど終始、劣勢に立たされた。1-2で迎えた終了間際にバックを取って2ポイントを奪取、劇的な逆転劇だった。

16年リオ大会58キロ級で五輪4連覇を果たした後、2年間競技から離れていた伊調は今春、本格的な練習を再開。10月の全日本女子オープン優勝で今大会の出場権を手にした。まだ完調ではなく、前日には日本人選手相手に17年ぶりの黒星を喫した。指導する田名部力コーチも「状態は70%ぐらい」と話していたが、予選とは違う試合運びで、ここ一番の強さを見せた。

東京五輪代表になるには来年9月の世界選手権でメダル獲得が最短。前回リオ五輪前の15年世界選手権では、女子6階級中5階級の五輪代表が決まっている。今大会と来年6月の全日本選抜に連勝すれば、世界選手権代表に決定。両大会の勝者が違う場合は、プレーオフが行われる。

伊調は、この優勝で東京五輪に大きく前進したが、6月には再び川井との対戦が予想される。リオ五輪前は伊調との対戦を避けて63キロ級に階級を上げた川井だが、今回は「姉妹での五輪出場」を目指す妹の友香子が59キロ級にいる。来年6月の「五輪金メダリスト同士の対戦」は避けられない。

伊調は「まだまだ。自分の中では伸びしろというか、まだ上げていけると思う。6月に向けて上げていきたい。その先に東京五輪があればいいと思います」と力強く話した。田南部コーチは「まだ腰高だが、筋力がつけば下がる。半年あればさらによくなる」と話す。2年間の休養、さらにパワハラ騒動を経て、伊調は5度目の大舞台へ力強く1歩を踏み出した。